改訂新版 世界大百科事典 「ロアンゴ王国」の意味・わかりやすい解説
ロアンゴ王国 (ロアンゴおうこく)
アフリカ中部,コンゴ川(ザイール川)右岸の大西洋沿岸部ロアンゴLoango,現在のコンゴ人民共和国に存在した王国。口頭伝承などの資料により,14世紀には一群の鍛冶師と戦士たちによって王国の基礎が築かれたとされている。より北部のティヨ王国およびコンゴ川対岸に栄えたコンゴ王国とも密接な関係があり,各王朝の始祖を同一の神に帰す神話もある。王および王権(ルワーングと呼ばれた)は,祖霊,地霊の崇拝と結び付き,国の繁栄を保証すべき〈神なる王〉の例としてJ.G.フレーザーの《金枝篇》にも言及されている。宗教的な力に比して政治的な権力の集中度は,隣のコンゴ王と比較しても弱く,王国は互いに相対的に独立しランクづけられた七つの地方に分かれ,各首長が順番に王位につくのが原則とされていた。こうした権力の分散がかえって西欧との接触後もコンゴ王国のようにもろくも崩壊することから免れさせた。大西洋沿岸という立地から,奴隷貿易で内陸との中継地として繁栄したが,19世紀末には王位継承争いから事実上解体した。
執筆者:渡辺 公三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報