日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロケット気象観測」の意味・わかりやすい解説
ロケット気象観測
ろけっときしょうかんそく
ロケットによる気象観測。気球による気象観測がむずかしくなる高度25キロメートルよりも高い層の風や気温、オゾンなどを小型ロケットで観測する試みは、1960年ころから盛んになった。観測データは、成層圏に特有な突然昇温や2年周期振動の研究にも大いに役だった。使用されるロケットと測定装置は国によってさまざまである。日本ではMT135Pとよばれるロケットを用いる。約80度の高度角で発射されたロケットの固体燃料が10秒ほどで燃え尽きたのち、慣性で60キロメートルくらいの高度に達してロケットゾンデrocketsondeを切り離す。このゾンデはパラシュートにつるされて降下し、地上から発射される電波のコントロールで観測データを発信する。気温は合金製の細い線でつくった敏感な温度計で測定し、高速落下による加熱昇温などを修正する。風向と風速は、毎秒記録されるゾンデまでの直距離、高度角、方位角から計算する。ロケットの性能があまりよくなかった1950年代には、上空まで気球で運んでから発射するロックーンrockoonも使用された。
観測ロケットは、気象ロケット観測所で打ち上げられ、その施設はアメリカなど世界12か所にある。日本では、1970年(昭和45)4月に岩手県気仙(けせん)郡三陸町綾里(りょうり)(現、大船渡(おおふなと)市三陸町綾里)に気象庁気象ロケット観測所が開設された。同年7月からロケット観測を始め、1997年(平成9)6月には通算1000号が打ち上げられた。その後、気象衛星の発達など観測体制の充実に伴い、2001年3月に打ち上げを終了している。
[篠原武次]