ロンドンにある著名な橋。市内でテムズ川をまたぐ多くの橋のうち,タワー橋に次いで最も下流にある。いまではロンドン市の東端のように思えるが,かつてはこの橋の北詰めあたりが中心であった。歴史は古く,ロンドンがローマ人の手で造られた1世紀,すでに橋の存在を示唆する文献があるが,位置はもう少し東であったようである。その後もテムズ川の北と南を結ぶ橋は長い間一つだけで,そのお陰でロンドンが交通の枢要地点として栄えた。木(1209年以後は石)の橋脚を狭い間隔で多く建て,その上には道路だけではなく家や店もあり,しばしば落ちたことは《ロンドン橋が落ちる》という有名な童謡が示すとおりである。1755年の法令で橋上の家は取り除かれ道路専用となり,交通量の増加により部分的改修が加えられたが,1831年に五つのアーチがある橋脚間隔の広い2代目石橋が完成,テムズ川の航行が便利かつ安全になった。このころには上流方面にいくつかの橋(とくに1819年開通したすぐ隣のサザーク橋は当時の最新技術を使った鉄製)が架けられたが,いずれも有料だったため,無料のロンドン橋がいつも混雑した。1904年幅を広げる工事をしたが焼け石に水で,73年に新しい橋が架けられ現在に至る。1968年に解体された古い石橋はアメリカの業者が買い取り,アリゾナ州レーク・ハバスー・シティで復元し記念物として現在なお保存されている。
執筆者:小池 滋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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