文化財の分類の一つ。以下の三種に大別される。(1)貝塚、古墳、都城跡、城跡、旧宅等の遺跡で国にとって歴史上または学術上価値の高いもの、(2)庭園、橋梁(きょうりょう)、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で国にとって芸術上または鑑賞上価値の高いもの、(3)動物(生息地、繁殖地および渡来地を含む)、植物(自生地を含む)および地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む)で国にとって学術上価値の高いもの。
これらのうち重要なものについては、国が文化財保護法に基づき、それぞれ史跡、名勝、天然記念物(そのなかでもさらに重要度の高いものは特別史跡、特別名勝、特別天然記念物)に指定、保護を図っている。また、その他に、登録制度に基づく登録記念物もある。2019年(平成31)3月1日時点での指定件数は、史跡1823件(うち特別史跡62件)、名勝415件(うち特別名勝36件)、天然記念物1030件(うち特別天然記念物75件)となっている。
[佐滝剛弘]
文化財のうち,いわゆる遺跡,名勝,天然記念物の3者をあわせた,主として法律上の概念。動物関係の一部,たとえばコウノトリやオオサンショウウオのように,種を特定する場合を除いて,ほとんどが土地に密着した文化財であることを特徴とする。〈紀念物〉の語は1919年制定の〈史蹟名勝天然紀念物保存法〉に初めてみえるが,〈天然紀念物〉に限定されている。現在の用法になるのは,1950年制定の現行文化財保護法からである。明治30年代ごろからこの種の土地に密着した文化財の保護の必要性が叫ばれるようになるが,植物学者三好学は留学先のドイツで知ったNaturdenkmalの保護の状況を紹介・移植に努力し,その訳語に〈天然紀念物〉をあてた。〈記念物〉の語はその後monumentの訳語にも使用され,普及する。ただし,法律関係以外では,〈歴史記念物〉の語が用いられたこともあったが,現在では巨石記念物の語が用いられている程度である。なお,〈紀念物〉と〈記念物〉は混用されていたが,文化財保護法以降はほぼ〈記念物〉となる。
執筆者:田中 琢
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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