ワラッハ(読み)わらっは(その他表記)Otto Wallach

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワラッハ」の意味・わかりやすい解説

ワラッハ
わらっは
Otto Wallach
(1847―1931)

ドイツの有機化学者。3月27日、ケーニヒスベルク(現、ロシア領カリーニングラード)に生まれる。地方官吏の父の転勤によりポツダムで成長。ゲッティンゲンベルリンウェーラーホフマンに学び、ボンでケクレ助手(1870)、薬化学教授(1879)を経て、V・マイヤー後継としてゲッティンゲン大学教授(1887~1915)。テルペン研究の権威者であり、ケクレが収集し放置していた植物精油にテルペンが含まれることを知り、それに関する126の論文を発表し、当時混乱状態であったその種族に巧みな識別を行い、合成によって関係を明らかにし、精油工業の発展をもたらし、ステロイド化学の基礎となった。1910年ノーベル化学賞を受賞。1931年2月26日ゲッティンゲンで没した。

[岩田敦子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「ワラッハ」の解説

ワラッハ
ワラッハ
Wallach, Otto

ドイツの有機化学者.ゲッチンゲン大学でF. Wöhler(ウェーラー)について,のちベルリン大学で化学を学んだ.1870年ボン大学でF.A. Kekulé(ケクレ)の助手,1876年同大学教授,1889年ゲッチンゲン大学教授となった.実験家タイプの化学者で,1880年硫酸の存在下でアゾキシベンゼンからp-ヒドロキシアゾベンゼンを得る反応(ワラッハ転位)を発見し,のちにしだいに精油化学に転じた.精油を分析してそれがテルペン類であることを示し,純粋であると考えられた精油が混合物であること,同じ化合物に異なる名称が与えられていることなどを解明.重要な化合物α-テルピネオールの構造を決定した(1895年).テルペン類の研究で,1910年ノーベル化学賞を受賞した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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