アルミニウム精錬業(読み)アルミニウムせいれんぎょう(その他表記)aluminium refining industry

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルミニウム精錬業」の意味・わかりやすい解説

アルミニウム精錬業
アルミニウムせいれんぎょう
aluminium refining industry

原料ボーキサイトから得たアルミナ酸化アルミニウム)を電気分解してアルミニウム地金を生産する産業。ボーキサイトからアルミナをつくる方法は,1888年にドイツの K.J.バイヤーが発明し,バイヤー法として知られている。アルミナを電気分解する方法はアメリカ合衆国のチャールズ・マーティン・ホール,フランスのポール=ルイ=トゥサン・エルーが別個に研究していたが,偶然 1886年に発明,ホール=エルー法と呼ばれる。アルミニウム精錬は,ヨーロッパでは 1888年にアルミニウムインダストリーが設立され,アメリカでも同年,ピッツバーグ・リダクションが発足した(→アルコア)。その後,第1次世界大戦,第2次世界大戦を通じてアルミニウムは軍事用の戦略物資として重視されたが,民需用としても広く用いられ,アルミニウム精錬業は飛躍的に成長した。日本では明治期にアルミニウム地金を輸入して加工を行なう事業から始まったが,地金輸入が増加するとともに精錬業の登場が期待され,1916年頃から企業化を試みたが成功せず,1934年に日本電気工業が明礬石(みょうばんせき)を原料に企業化した。その後,古河電気工業を中心に輸入原料・技術によるアルミニウム国産化が進められ,1939年,日本軽金属の設立により日本のアルミニウム精錬業の基礎が確立され,精錬-加工の一貫体制が整った。第2次世界大戦終結とともに操業を中断したが,1948年に精錬を再開した。以降,順調な成長を続け広範な需要産業に対して安定した供給を行なってきた。しかし,2度の石油危機によるアルミニウム市場の冷え込みとともに,燃料費の高騰が国内精錬業の国際競争力を著しく低下させた。このため輸入地金が増加し,国内精錬能力は大きく減退した。その後,多くの精錬企業が精錬業から撤退を余儀なくされ,海外の開発輸入プロジェクトに活路を見出している。

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