イギリスでブラウン政権が誕生(読み)いぎりすでぶらうんせいけんがたんじょう

知恵蔵の解説

イギリスでブラウン政権が誕生

2007年6月に、ブレア首相が退陣し、24日の労働党臨時大会でゴードン・ブラウン財務相が無投票で新党首に選ばれ、首相に就任した。ブレア首相は「増税とばらまき」福祉路線の伝統的な労働党の政策を軌道修正し、「ニューレーバー(新しい労働党)」と呼ばれた。市場一辺倒ではない自由主義を導入しつつ、人々の自立参加を促す「第三の道」を目指したが、最後にはイラク戦争開始前の情報操作疑惑や戦後復興の行き詰まりで劣勢に立たされ、10年間の長期政権に終止符を打たざるを得なかった。ブラウン新首相はこの間ブレア政権を支えた重鎮であり、基本的にブレア流の改革路線の継承者である。ブレア政権は米英協力関係を軸に外交を重視したが、ブラウン首相は財務相として成長率と雇用を安定させた前政権の立役者であることから、経済社会面での政策に期待がかかる。成長率は平均2.5%と安定し、失業率も独仏に比べて低く、5%に収まっているが、住宅価格はこの10年で3倍に跳ね上がっており、住宅問題や医療改革が焦眉の急とみられている。他方で、対外政策は欧州連合(EU)統合積極策にかじを切った前政権と比べて、自由主義の立場から国際競争力を強めることを強調してフランスとは一線を画し、ユーロ導入にもそれほど積極的ではない。米国ブッシュ大統領を積極的に支持して武力介入に踏み切ったブレア政権とは異なり、途上国への経済援助の強化などに力を入れる点で外交手法は違う。当初高い人気を得ていたブラウン首相であったが、9月から10月にかけて、40歳のデービット・キャメロン保守党党首の攻勢を前にして減税政策で後手に回り人気が下降気味となり、労働党と保守党の支持率が逆転した。09年には総選挙が予想されるが、勝敗の見通しが不透明ななか、ブラウン首相は選挙日程の決定を先送りにしている。

(渡邊啓貴 駐仏日本大使館公使 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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