日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウィーン道路交通条約」の意味・わかりやすい解説
ウィーン道路交通条約
うぃーんどうろこうつうじょうやく
Convention on Road Traffic (Vienna,1968)
おもにヨーロッパ諸国が加盟している自動車運転に関する国際条約。自動車運転の国際ルールを設けることにより、道路交通の発達と安全運転の促進を目的としている。1968年にオーストリアのウィーンで開かれた国際連合経済社会理事会で採択されたため、ウィーン道路交通条約の通称で知られる。発効は1977年。第二次世界大戦後間もない1949年に採択されたジュネーブ道路交通条約を、国際化やモータリゼーションの進展にあわせて補強した条約であり、2015年4月時点の加盟国は85か国である。ウィーン道路交通条約は加盟国に対し、同条約に定めた国際ルールに沿って国内法を整備するよう求めている。このため国内法の大幅改正が必要な日本、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどは未加盟である。したがって日本で発行された国際免許証では、基本的にウィーン条約加盟国での運転はできない。ただしドイツ、フランス、イタリア、スイス、ベルギーなどは日本と二国間道路交通協定を結んでおり、これらの国では日本の国際免許証が有効である。
ウィーン道路交通条約は、第13条で「運転者はいかなる状況においても、(中略)必要な操作を実行する立場にいつもいることができるよう車両を制御下におかねばならない」と定めており、完全に自走する自動運転車が実用化された場合には、条約に違反することになる。このためフランス、ドイツ、イタリアなどが主導してウィーン道路交通条約の条文を改正し、「運転者が乗っていて、即座に人間による運転に切り替えることが可能な状態ならば、この自動運転システムは合法である」との条文を加えた。日米が加盟するジュネーブ道路交通条約を含め、自動運転車という最先端技術の登場を機に、新たな運転の国際ルールづくりが迫られている。
[矢野 武 2015年8月19日]