ジュネーブ道路交通条約(読み)じゅねーぶどうろこうつうじょうやく(その他表記)Convention on Road Traffic (Geneva,1949)

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジュネーブ道路交通条約」の意味・わかりやすい解説

ジュネーブ道路交通条約
じゅねーぶどうろこうつうじょうやく
Convention on Road Traffic (Geneva,1949)

「道路交通に関する条約」ともいう(昭和39年条約第17号)。1949年8月からジュネーブで開かれた「道路輸送および自動車輸送に関する国際連合会議」で採択され、「統一規則を定めることにより国際道路交通の発達及び安全を促進すること」(条約前文)を目的としている。おもな内容は次の三つである。

(1)旅行者などが免税一時輸入する自動車の通関手続の簡素化
(2)締約国の道路交通に関する規則の可能な限りの統一化
(3)国際運転免許証(外国の行政庁が発給する条約上の免許証)の効力の締約国間における認証
 従来、道路交通に関しては、1926年(大正15)の「道路交通に関する国際条約および自動車交通に関する国際条約」、1931年(昭和6)の「道路標識の統一に関する条約」によって国際的に規制されていたが、その内容が国際的な交通および運輸事情の発達にそぐわないものとなってきた。そこで、1948年8月の第7回国連経済社会理事会の決議に基づき、ジュネーブで開催された前述の国連会議において新たな条約の制定が検討され、1949年9月19日、同条約が採択された(1952年3月26日発効)。この条約は、総則と最終規定を含む7章と10の付属書により構成されている。おもなものは以下のとおり。

(1)道路交通に関する規則
(2)標識および信号機
(3)国際交通における自動車および被牽引(ひけんいん)車に適用する規定
(4)国際交通における自動車の運転者
 日本はこの条約が採択された当時、第二次世界大戦後の対日講和条約(平和条約)発効前であったため、前述の国連会議に参加していなかった。また、免税一時輸入される外国産自動車が転売されることによって国内自動車産業が圧迫されるおそれがあること、日本人の長期海外旅行が外貨持ち出し制限の面から困難であり、道路交通条約に加盟することの実益が乏しいこと、などの理由により、この条約に加盟していなかった。しかしながら、1960年ごろからの経済成長を背景として、これらの障壁がなくなりつつあったこと、第18回オリンピック大会(東京オリンピック)の開催を1964年(昭和39)10月に控え、海外渡航者および来日観光客の便宜を積極的に考慮する必要が生じたことなどから、1964年8月7日に道路交通条約に加盟した(1964年9月6日発効)。

 加盟に伴い、1964年、道路交通法が改正された。車両などの交通方法に関する規定の整備(キープレフトの原則の導入など)、国際運転免許証の国内における取扱いおよび国外運転免許証制度に関する規定の整備が行われた(1964年10月1日施行)。国際運転免許証とは、外国の行政庁が発給する条約上の免許証で、国外運転免許証とは、都道府県公安委員会が、現に国内で免許(小型特殊免許、原付免許、仮免許を除く)を受けている者に発給する条約上の免許証である。いずれも有効期間は1年。2015年(平成27)4月時点で同条約には97か国・地域が加盟している。

 なお、道路交通条約にはこのほかにヨーロッパ諸国などが加盟するウィーン道路交通条約があるが、日本のほかアメリカ、カナダ、オーストラリアなどは未加盟(2015年4月時点)である。

[阿久津正好・中村振一郎]

『道路交通法研究会編著『最新 注解道路交通法』全訂版(2010・立花書房)』『交通関係法令研究会編『交通小六法』(2010・大成出版社)』『『交通統計』各年版(交通事故総合分析センター)』

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