改訂新版 世界大百科事典 「オニール家」の意味・わかりやすい解説
オニール家 (オニールけ)
O'Neills
アイルランド,アルスター地方に12世紀から君臨した族長の家柄。オドンネル家とともにノルマン人の侵略に,あるいはチューダー朝期イギリスの侵略に抵抗した。16世紀の指導者コン・オニールConn O'Neill(1484ころ-1559)は,イギリス軍と戦った後,渡英してヘンリー8世に所領を献じ,再授封されてティロン伯となった。息子のシェーン・オニールShane O'Neill(1530-67)は,コンの庶子でエリザベス1世が相続人と認めたマシューを滅ぼし,イギリス軍との戦いを続け,しだいにアルスター全域を支配,完全な独立を目ざしたが,アルスターの支配をめぐって長く対立していたオドンネル家の軍隊に敗れ,味方だったマックドンネル家に殺された。コンの孫ヒュー・オニールHugh O'Neill(1550-1616)は第2代ティロン伯となり,エリザベス1世軍と戦って1598年大勝した。各地の反乱はこれにより激化したが,イギリス軍はマウントジョイ卿の指揮の下で,1600年にはその大半を鎮圧した。ヒュー・オニールは,翌年スペインからの援軍を得てマウントジョイ軍と戦うが大敗し,アルスターに逃れ,03年に降伏した。ヒューはこの後カトリックの礼拝を禁じられ,所領の大半を没収されて,07年に,他の族長と共に逃亡しローマに移住した。抵抗の拠点アルスターは,この〈伯爵の逃亡〉の後,イギリスの植民政策により一転して,親イギリス的なプロテスタントの支配する地方に変えられていった。なお,アメリカの劇作家ユージン・オニールもこの一族の子孫である。
執筆者:上野 格
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報