改訂新版 世界大百科事典 「カイヅカイブキ」の意味・わかりやすい解説
カイヅカイブキ (貝塚伊吹)
Sabina chinensis Ant.cv.Kaizuka(=Juniperus chinensis L.cv.Kaizuka)
ヒノキ科の常緑針葉樹ビャクシン(イブキ)の園芸品種で,温暖な地方に広く植えられている。高さ5~15mとなり,幹は太く直立するがねじれる。枝が密に分かれしかも斜めに旋回して伸びるので,樹形は火焰(かえん)状を呈する。ビャクシンの成型に似て通常は鱗片葉のみで,針状の葉をもたない。乾燥,潮風,大気汚染に強く,砂質地にもよく育ち,しかも陽樹ながら日陰にも植えられる。また刈込みにも耐えるので,近年,工場,道路の緑樹帯,住宅地の緑化樹や生垣として多く用いられるようになった。本州から九州に至る各地に植えられるが,関西以西の暖地の方が育ちがよい。おもな病気としてはビャクシンや近縁種にもつさび病があり,春に幹・枝・葉に紫褐色の寒天状の塊を生じる。このさび病菌の1種は,ビャクシン類を中間宿主として,ナシ,ボケ,カリンなどの赤星病を起こし重大な被害を与える。したがって,両者の栽培地は互いに隔離しておく必要がある。通常は挿木でふやし,早春に若い木の充実した枝から挿穂をとり床に植え込む。実生も行われる。カイヅカイブキはビャクシンから選択されたという意見と,もともと匍匐(ほふく)性のミヤマビャクシンから立性の系統が選択されて成立したという意見がある。名前の起りは明らかでない。
執筆者:濱谷 稔夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報