山川 世界史小辞典 改訂新版 「カザフ人」の解説
カザフ人(カザフじん)
Qazaq
カザフ語の発音では「カザク」。語源的にはコサックと同じ「放浪者・自由民」の意味だが,集団としては別。カザフスタンの主要民族で,中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区イリ・カザフ自治州,ウズベキスタンなどにも住み,合計約1100万人。トルコ系のカザフ語を話す。1920年代まで大半が遊牧民だった。スンナ派ムスリムだが,シャリーアより慣習法の伝統が強い。15世紀中頃に遊牧ウズベク族から「分離」して成立したといわれることがあるが不正確で,ウズベクのハンとは別の家系のカザフ・ハンが,ウズベクのうち南下せずキプチャク草原に残った者たちを取り込んでできた集団である。17~18世紀にジュンガルと激しく争い,その滅亡後にジュンガル盆地(新疆北部)に居住地を拡大した。豊かな口承文芸を持つ。歴史上の著名人として,18世紀にロシアと清朝への二重朝貢の形で巧みな外交を行ったアブライ・ハン,19世紀の学者ワリハノフと詩人アバイ,20世紀初頭の民族運動家ボケイハノフらがいる。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報