日本大百科全書(ニッポニカ) 「カポックノキ」の意味・わかりやすい解説
カポックノキ
かぽっくのき
kapok
[学] Ceiba pentandra (L.) Gaertn.
パンヤ科(APG分類:アオイ科)の落葉高木。種子を包んでいる綿毛を詰め物として古くから利用し、アレクサンドロス大王(前356―前323)の時代、すでにクッション用詰め物として珍重されていた。アジアの熱帯地域で栽培されるが、原産地はまだ確定されていない。高さ20メートル以上、基部は板状に広がった板根(ばんこん)に支えられる。枝は水平に輪生する。葉は5~8小葉からなる掌状で、果実成熟時に短期間落葉する。若葉の葉腋(ようえき)から数本の花柄を出し、乳白色の花を一つずつつける。果実は紡錘形で下垂し、長さ10~13センチメートル、内部は5室に分かれ100~150個の種子がある。熟すと果実が割れ、カポックとよばれる綿毛が出る。これがカポック繊維で、竿(さお)の先につけた鎌(かま)で果実を切り落とし、繊維を分離する。繊維は長く、光沢があり、耐久性、弾力性に富むので、枕(まくら)やクッションなどの詰め物として賞用される。また、コルクよりも浮力が優れるので救命具の詰め物ともされた。材は丸木舟、家具、楽器の胴などに利用される。若い果実は食用とし、種子の油は食用、潤滑油、せっけん材料となる。なお、近縁のキワタノキもカポック同様の綿毛を生じ、しばしばカポックノキと混同される。
[星川清親 2020年4月17日]