日本大百科全書(ニッポニカ) 「キリシマツツジ」の意味・わかりやすい解説
キリシマツツジ
きりしまつつじ / 霧島躑躅
[学] Rhododendron obtusum Planch.
ツツジ科(APG分類:ツツジ科)の常緑低木。単にキリシマともいう。小枝をよく分枝し、葉は枝先に集まり、長倒卵形、長さ2~3センチメートルで質はやや厚い。4、5月、枝先に緋紅(ひこう)色、径3~4センチメートルの花を2、3個つける。花冠は5裂し、上部の弁に濃紅色の斑点(はんてん)がある。萼片(がくへん)は卵形で小さく5片あり、雄しべは5本で、花糸の下半部に粒状毛がある。果実は卵形で硬い毛を密生する。鹿児島県に野生するサタツツジR. sataenseとヤマツツジを主として、これにミヤマキリシマが加わってできたといわれる園芸品種である。花が朱紅色で二重咲きのヤエキリシマのほか、シロキリシマ、ベニキリシマなど品種が多い。正保(しょうほう)年間(1644~1647)に薩摩(さつま)から大坂に初めて伝えられ、そして京都、江戸に広まり、品種も多くなった。その後、天保(てんぽう)年間(1830~1843)に久留米(くるめ)の有馬藩士、坂本元蔵(1785-1854)は200余品種の育種を行った。福岡県久留米地方は本種の栽培が盛んで、現在およそ300品種があり、クルメツツジの名でよばれている。
[小林義雄 2021年4月16日]