キリンサイ(読み)きりんさい

改訂新版 世界大百科事典 「キリンサイ」の意味・わかりやすい解説

キリンサイ (麒麟菜)
Eucheuma muricatum(Gmelin)W.v.Bosse

熱帯および亜熱帯に多く生育する海藻で,10~20cmの大きさの軟骨質のミリン科の紅藻。体は初め円柱状であるが,後に不規則に分枝し,あたかも潮間帯の岩上にうずくまるような形状を呈し,また体の周囲には多数のいぼ状突起をもつ。世界各地の熱帯および亜熱帯海域に分布する。日本では太平洋沿岸の四国以南に知られる。近縁の種にカタメンキリンサイE.gelatinae J.Ag.,オオキリンサイE.striatum Schmitz,トゲキリンサイE.serra J.Ag.などがある。いずれも暖海に生育し,寒天の原藻となる。潮間帯に網を水平に張った施設をつくり,ここにキリンサイ類を生育させて養殖が行われる。養殖はフィリピンでとくに盛んである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キリンサイ」の意味・わかりやすい解説

キリンサイ
きりんさい / 麒麟菜
[学] Eucheuma muricatum Weber van Bosse

紅藻植物、ミリン科の海藻。リュウキュウツノマタ(琉球角又)ともいう。表面は小さいいぼいぼに覆われ、こりこりした軟骨質の円柱状体枝をもつ。体枝は何回となく分岐を繰り返して互いに絡み合い、全体として不定形団塊をなす多年生藻。体色、体長にも変化が多い。暖海性で、干潮線下から5メートルくらいまでの海底の岩上、サンゴ礁上に1年を通じて生育する。同属には、ほかにアマクサキリンサイ、カタメンキリンサイなどがあるが、いずれも暖海性で、体形変化が激しく分類はむずかしい。キリンサイは乾燥して保蔵し、塩抜きした体を刺身つま、あるいは二杯酢にして食用に供したり、チューインガムなどの製造に使われる、寒天によく似たカラーゲナンの原料とする。

 キリンサイの仲間は南西諸島以南のフィリピン諸島インドネシア島々の沿岸に多産するが、これらの島々では人工養殖も行われており、カラーゲナンの原料としてアメリカや日本に輸出されている。

[新崎盛敏]


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