ギリシャ経済危機(読み)ぎりしゃけいざいきき(にせんじゅうごねん)

知恵蔵 「ギリシャ経済危機」の解説

ギリシャ経済危機(2015年)

2015年8月にEU(欧州連合)が金融支援を正式決定したことで、債務不履行(デフォルト)とユーロ圏離脱(グレッグジット)は回避されたものの、先行きが不透明なギリシャの経済危機。09年10月に発足したパパンドレウ政権が前政権による財政粉飾を発表、更に翌年1月に欧州委員会がその会計処理の不備を指摘したことなどから、ギリシャ国債は暴落した。国債(ソブリン債)への信用不安は、重債務国のアイルランドポルトガル、スペイン、イタリアに波及し、EU全域を巻き込む金融危機(欧州ソブリン危機)へと拡大していった。その後、ギリシャ政府はEUから10年と12年の2次にわたり総額33兆円の支援を取り付ける一方、EUが支援条件に突き付けた緊縮財政策を進めた。
しかし、財政改善のめどは立たず、失業率の上昇、年金の引き下げなどで国民の不満も高まり、15年1月の総選挙では、「反緊縮財政」を公約に掲げる急進左派連合のチプラス政権が誕生した。これによって、一層の緊縮策を求めるEUとの交渉が行き詰まり、ギリシャは6月末に返済期限を迎えたIMF(国際通貨基金)からの借り入れも延滞、同時にEUの第2次金融支援も終了した。
7月5日、チプラス政権は改めて民意を問うため、国際債権団(欧州委員会、欧州中央銀行、国際通貨基金)の緊縮財政策を受け入れるか否かについて国民投票を実施した。結果は反対約61%、賛成約39%と、緊縮拒絶が圧倒的多数を占めた。しかし、国民投票は「ユーロ圏に残ること」(チプラス首相)を前提にしていたため、同月13日、ユーロ圏の首脳会談を開き、ギリシャが財政改革の具体策を法制化することを条件に、支援継続で合意した。その後、ギリシャ議会は年金給付抑制、付加価値税の引き上げ、離島への軽減税率廃止など、事実上の緊縮策を盛り込んだ財政改革関連法を可決。8月14日、EUは欧州安定メカニズム(ESM)に基づき、3年総額約11兆9千円の第3次金融支援を正式決定した。

(大迫秀樹 フリー編集者/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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