出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
人民の意志のことであるが,民意とはつねに漠然としたものとしてあり,おもに為政者の側の用語として用いられる。いかなる支配であっても,それが持続するためには何らかの正統性を有していなければならず,支配者の私的利益を支配の目的として表明することはできない。支配が神意に基づくとされる場合でも,その神聖性が被支配者に受け入れられていなければならないだろう。とりわけ民衆の動向が政治社会に直接の影響を及ぼすようになると,支配は民意に基づくもの,少なくとも民意を反映したものとして弁証されなければならない。啓蒙専制君主が公共の福祉をうたったことはそのあらわれである。近代民主主義にあっては,原理的には構成員全員一致の社会契約による政治社会の設立が前提となるが(社会契約説),全員一致が経験的に不可能であるうえ,個々の政策についてつねに合意を得ることは困難であるために,民意はそれ自体一個のシンボルたらざるをえない。さらに大衆社会の進展は,民意シンボルにおける権力の偽装手段としての要素を強めることになる。
→世論
執筆者:吉岡 知哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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