日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
クーン(Helmut Kuhn)
くーん
Helmut Kuhn
(1889―1991)
ドイツの哲学者。アメリカのエモリー大学、ドイツのエルランゲン大学の教授を経て、1952年からミュンヘン大学教授。ハイデッガーの影響を強く受け、存在喪失の現代において根源的な存在回復の必要性を説く。歴史主義、実証主義を批判するが、ハイデッガーよりも現実の社会に関心をもち、良心、受苦、決断する人格相互の愛の共同体としての社会のあり方を追求した。美学の領域にも功績が大きい。主著に『芸術の文化的機能』2巻(1931)、『虚無との出会い』(1950)、『存在との出会い』(1954)、『国家』(1967)などがある。
[小池英光 2015年2月17日]
『斎藤博・玉井治訳『存在との出会い』(1973・東海大学出版会)』