コマチゴケ(英語表記)Haplomitrium mnioides (Lindb.)Schust.

改訂新版 世界大百科事典 「コマチゴケ」の意味・わかりやすい解説

コマチゴケ
Haplomitrium mnioides (Lindb.)Schust.

コマチゴケ科の苔類。チョウチンゴケモドキともいう。主として西日本の低地に分布し,湿岩上や土質の崖などにやや普通にみられる。植物体は淡緑色で軟らかく肉質。地下茎がよく発達するが,仮根はない。地上茎は斜上し,長さ1~2cm。葉は茎の両側面と背面の3列につき,広卵形から腎臓形で全縁。雌雄異株で,造卵器や造精器は茎の先端に露出する。蒴(さく)は長楕円形で縦に一つの裂け目を生じ,そこから胞子を放出する。コマチゴケの名は,植物体の姿が美しいために小野小町に見立てたもの。同属のキレハコマチゴケH.hookeri(Smith)Neesはヨーロッパと北アメリカに分布し,日本では中部地方の高山に稀産する。コマチゴケと異なり,葉がひし形で葉縁が多少切れ込む。コマチゴケ科は起源の古い原始的な苔類とみなされている。世界には1属約10種が点々と隔離分布し,日本には上記の2種がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コマチゴケ」の意味・わかりやすい解説

コマチゴケ
こまちごけ
[学] Haplomitrium mnioides (Lindl.) Schust.

コケ植物コマチゴケ科の1種。低地の林の中の湿った崖(がけ)や地上などに群生する。全体に薄い緑色で、高さ2~3センチメートル、土の表面や地中をはう地下茎状の部分はほとんど白色、仮根はない。葉は3列につくが、側葉のほかに、茎の背面に小形の葉がつく。葉は卵形でみずみずしく、中央脈などはない。雌雄異株。雄器は茎の先に集まってつき、この部分はやや平らになる。雌の造卵器は茎の先のほうに多数むき出しになってつき、花被(かひ)などの保護器官は発達しない。胞子体は春つくられる。日本周辺だけに分布するが、暖かい地方に限られる。日本にはこのほかに、よく似たキレハコマチゴケH. hookeriがあり、立山(たてやま)や八ヶ岳(やつがたけ)の高山に生える。

[井上 浩]

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