日本大百科全書(ニッポニカ) 「コメルツ銀行」の意味・わかりやすい解説
コメルツ銀行
こめるつぎんこう
Commerzbank AG
ドイツの金融機関。ドイツ銀行と同じく、商業銀行業務から証券・保険業務にまで及ぶ多角的な業務形態(ユニバーサル・バンキング・システム)をとっている。
1870年、かつてのハンザ同盟都市出身の有力な事業家や商業銀行家、小規模な銀行経営者たちによって、ハンブルクにコメルツ・ウント・ディスコント(商業・手形割引)銀行Commerz-und Disconto-Bankが設立されたのが始まりである。コメルツ・ウント・ディスコント銀行は、1905年ごろから活動の中心をベルリンに移し、統合・合併を重ねながら業務を拡大、1920年に中部ドイツ民間銀行Mitteldeutsche Privat-Bankと合併して名称をコメルツ・ウント・プリバート銀行Commerz-und Privat-Bankとした。さらに、第二次世界大戦下の1940年、コメルツ銀行と改称した。戦後、分割・解散をさせられたりしたが、1958年にはふたたび単独の銀行となった。戦後のドイツ経済の目覚ましい復興とともに銀行も立ち直り、支店数も短期間で増やしていった。戦後、フランクフルトに本社を移し、1971年にニューヨーク支店を開設、ドイツの銀行としては初めてのアメリカ進出を果たしている。1980年代以降は、国内外の保険会社、不動産銀行、住宅金融組合などと提携し、アルフィナンツ・グループAllfinanz Groupを形成している。
ドイツでは伝統的に金融機関による産業支配が強く、大手銀行は株式の持ち合い構造を通じて他の産業分野に大きな影響力を行使してきた。しかし、競争のグローバル化に伴いその関係は変化し、コメルツ銀行も、こうしたドイツ型の金融機関と産業企業の複合体制の見直しを進めるとともに従来から弱いとされてきた投資銀行業務の強化にも乗り出した。投資銀行業務の強化に関しては、ライバルであるドイツ銀行が1999年6月、全米8位にランクされていたバンカース・トラストの買収を完了させるなど活発な動きをみせていたが、コメルツ銀行は当時は自前で投資銀行業務を強化する方針をとり、この部門での人員強化を図った。
その後コメルツ銀行は、世界的な金融危機に対処するため、2008年11月にドイツ政府から82億ユーロの資本注入を受けた。2009年5月、大手金融グループのアリアンツからドレスナー銀行を買収し、合併した。2008年の総資産額は6252億ユーロ、預金高1702億ユーロ、従業員数4万3169人。ドイツ国内外に約1200か所の営業拠点をもつ。
[所 伸之]