手形割引(読み)てがたわりびき

精選版 日本国語大辞典 「手形割引」の意味・読み・例文・類語

てがた‐わりびき【手形割引】

〘名〙 銀行などが手形に記載された金額から、支払期日までの利子手数料を差し引いた残金で、その手形を買い受けること。支払期日以前に手形を現金化する時に用いられる。〔銀行小言(1885)〕

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デジタル大辞泉 「手形割引」の意味・読み・例文・類語

てがた‐わりびき【手形割引】

手形所持人が満期前に現金化したいとき、銀行などの金融機関に依頼して手形金額から満期までの利息を差し引いた金額を受け取り、その手形を裏書譲渡する行為割引

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百科事典マイペディア 「手形割引」の意味・わかりやすい解説

手形割引【てがたわりびき】

銀行融資の一形態。割引の対象となる商業手形銀行引受手形荷為替手形の3種をその支払期日前に,期日までの利子(割引料)を差し引いた金額で手形所持人から銀行が買い取ること。商取引の裏付けがあって,支払が確実であり,流通期間の比較的短い手形が割引対象となる。割引料は出資法によって上限が規制されており,また手形貸付けの場合よりも低い。手形の振出人や割引依頼人自身が倒産や信用悪化に陥った場合,銀行は割引依頼人に対して直ちにその手形を買い戻すように請求できる。これを買戻請求権という。→再割引
→関連項目市中金利白地手形歩積預金割引市場割引政策割引手形

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改訂新版 世界大百科事典 「手形割引」の意味・わかりやすい解説

手形割引 (てがたわりびき)

金融の一手段として行われる取引形態で,金融機関等が,取引先の所持する支払期日未到来の手形を買い取る取引をいう。支払期日前手形の換価方法として,買取日から支払期日に至るまでの金利相当額(これを割引料という)を手形額面額から差し引く形式をとるところから,手形割引の名称が発生したものである。割引の対象となる手形の種類としては,銀行引受手形,商業手形,荷付為替手形があるが,大部分は商業手形である。商業手形は,商取引に基づく代金支払または代金取立てのために振り出される手形であり,商品売買等の裏づけがあるために,決済は確実で,債権回収上比較的安全であると考えられ,かつ再割引の便もある。このため手形割引は,手形貸付けとともに,金融機関の与信業務のなかで中心的な地位を占める。

 なお手形割引の法律的性質については,手形を担保とした消費貸借とする説と,単なる手形の売買とする説の2説があるが,今日では売買説の立場が有力である。全国銀行協会連合会(全銀協)は,〈銀行取引約定書ひな型〉の中で,売買説を採用することを明示している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「手形割引」の意味・わかりやすい解説

手形割引
てがたわりびき
discounting of bill

単に割引 discountともいう。満期のまだきていない手形の所持人 (割引依頼人) から金融機関がその手形を譲り受け,手形金額から満期までの利息 (割引料という) を差引いた金額を割引依頼人に交付する融資方法の一つで,金融機関の貸付業務の一種。金融機関が割引く手形には商業手形荷為替手形,銀行引受手形などがあるが,一般に手形割引という場合商業手形の割引をさすことが多い。そして手形貸付よりも期間は短く,利子率も低い。手形の振出人である企業の信用度によって割引してくれるので,最優遇金利が適用され,公定歩合に連動して動く。なお,割引いた手形が不渡りになった場合は,金融機関は割引依頼人に不渡手形の買戻しを請求するが,これはあらかじめ金融機関と割引依頼人 (取引先) の間で締結されている特約 (銀行取引約定書など) に基づく権利によって行われるもので,手形買戻請求権という。そしてこの場合の手形の買戻しは再売買であるとされている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「手形割引」の意味・わかりやすい解説

手形割引
てがたわりびき

期日未到来の手形を満期までの利息(割引料)を差し引いて金融機関が買い取る形式の融資形態。割引の対象になる手形には商業手形、荷為替(にがわせ)手形、銀行引受手形などがあるが、大部分は商業手形である。手形貸付とともに、短期運転資金の融資方式として代表的なものである。なお、手形割引の法律的性質については、手形の売買とする説と消費貸借とする説とがあるが、今日では前者のほうが一般的である。

[井上 裕]

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世界大百科事典(旧版)内の手形割引の言及

【裏書】より

…裏書は種々の経済的目的のために行われる。所持人がその所持する手形を銀行その他の金融機関あるいは金融業者に裏書譲渡して資金を入手するために行われることが最も多い(手形割引)。また,所持人が,借入金または商取引上の債務の支払いのために,自己の所持する手形を裏書譲渡することもある。…

【貸出し】より

…銀行が信用を供与する業務(与信業務)の総称。具体的には,銀行法上の勘定科目による分類では手形貸付け,証書貸付け,当座貸越し,手形割引,コール・ローン(コール市場),支払承諾,貸付有価証券をさす。一般には,このうちの手形貸付け,証書貸付け,当座貸越し,手形割引の四つを貸出しという。…

【為替】より

…これによって手形が流通し,複数の債務が処理されるようになった。手形割引の制度は教会の徴利禁止の影響で成立が遅れたが,イギリスでは17世紀末,大陸では18世紀中に成立した。【清水 広一郎】
[イスラム地域]
 アッバース朝時代から用いられ,振出人が他地にある受取人あてに送る現金送達ḥamlの手段である為替手形を,アラビア語でスフタジャsuftajaと呼ぶ。…

【約束手形】より

…たとえば,商品の買主Aは,売買代金を手形金額,代金支払日を満期,売主Bを受取人,とする約束手形を振り出す。売主Bは,この場合,手形を満期まで所持して取り立てるという方法と,満期前に銀行Cに裏書譲渡する(手形割引を受ける)か担保として貸付け(商業手形担保貸付け)を受けるという方法がある。前者の場合,銀行Cは満期にAから手形金額を取り立てることになる。…

※「手形割引」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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