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コンパクトカセット コンパクトカセット compact cassette

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デジタル大辞泉の解説

コンパクト‐カセット(compact cassette)

カセットテープ

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

コンパクトカセット
こんぱくとかせっと
compact cassette

1962年にオランダフィリップス社が発表したアナログオーディオ用のカセットテープ。発表とこれに続く発売の過程において、フィリップス社はていねいで慎重な対応策をとった。まず、発表と同時にコンパクトカセットC-60(60分テープ)とカセットレコーダーEL-3300をヨーロッパの主要国向けに数量限定で試験的に発売した。試験期間中に、種々の改良を加えてシステムの完成度向上を行った。2年の試験期間を経て、1964年に本格的な発売を開始し、それと同時に各国のメーカーにコンパクトカセット・システムの採用を呼びかけた。さらに、フィリップス社が定めたコンパクトカセットの基本仕様が守られ互換性が保たれることを条件に、技術を無償で公開するという英断を行った。このため、カセット用テープレコーダーを使用する限り、すべて互換性があるという理想が実現された。このことと、小型で取扱いが容易なこと、安価なわりに音質がよいこと、などの特長が評価されて、急速に世界的に普及した。
 コンパクトカセットは単にカセットテープとよばれることもあるが、コンパクトカセットの呼び名が正しい。磁気テープおよび送出用・巻き取り用の二つのリール(巻き枠のことで、ハブともいう)などが一つのケースに収められている。録音、再生時のテープ速さは毎秒4.76センチメートル、ケースの寸法は100×63.8×12ミリメートル、テープ幅は3.81ミリメートルの1種類である。これが技術公開に際して、フィリップス社が各メーカーに守ることを条件とした基本的な仕様である。
 録音・再生トラックはテープ幅の半分を使い、行きと帰りで半分ずつ使う往復録音を行うことで、長い録音時間を実現した。録音時間は往復で30分、60分などが標準的で、それぞれC-30、C-60などの型名で表示されている。その後、46分、54分、90分、120分その他多くの種類が発売された。初めのころは片方が終わったらカセットを裏返して入れ直す必要があったが、後に自動反転機構が備えられ、カセットを入れ直す必要がなくなった。
 テープはポリエステルなどのプラスチックをベース(基材)とし、これに磁性体の微粉を塗布または蒸着によって付着させてつくる。最初に開発・発売されたものはノーマルテープ(1962年オランダのフィリップス社)で、磁性体に二酸化第二鉄(ガンマ・ヘマタイト)を用いたものである。コンパクトカセットはオープンリール方式に比べて、テープ幅が狭くテープ速さが遅いというハンディキャップがあるため、音楽の録音・再生に適した性能を得るには磁性体を高品質化する必要があり、これに応じて次々に新しいものが開発・商品化された。これらは特性が少しずつ違うため、国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)によってテープの分類が行われた。この分類で、ノーマルテープはType とされた。代表的な高性能テープは次の通りである。クロムテープは、二酸化クロムを磁性体に用いたもの(1970年ドイツのBASF社とアメリカのメモレックス社)で、これとほぼ同じ性能をもつコバルト添加酸化鉄を用いたテープ(1972年アメリカの3M社)も発売された。これらはType と分類された。フェリクロムテープは二酸化第二鉄の上に二酸化クロムを塗布した二層構造のテープ(1973年日本のソニー社)で、Type と分類された。メタルテープは、鉄または鉄合金を用いたテープ(1978年アメリカの3M社)で、Type と分類された。後のものほど高性能である。磁性体によって特性が微妙に違うため、高級なカセット用テープレコーダーでは、ノーマル・ポジション、クロム・ポジション、メタル・ポジションなどが設定され、テープの種類に応じて最適な条件で録音・再生が得られる配慮がなされた。
 コンパクトカセットから派生したカセットテープとして、次のものがある。
(1)マイクロカセット 1969年(昭和44)にオリンパス社が提案・発売した小型のカセットテープ。音質より小型化を重視したもので、会議の記録、メモ、留守番電話などの事務的用途が主である。1980年代に音楽の録音を目的にしたレコーダーも商品化されたが、テープ速さが2.5センチメートル毎秒と遅いため音楽用に十分な音質が得られず、普及するには至らなかった。2010年(平成22)にすべてのレコーダーの生産は終了したが、録音用テープとクリーニングテープの供給は続いている。
(2)エルカセット 1976年にソニー、松下電器産業(現、パナソニック)、ティアック3社が提案・発売した大型のカセットテープ。コンパクトカセットより幅の広いテープを速い速度で走行させることによって音質を向上させ、カセットテープの便利さとオープンリールの音質のよさを両立させるのがねらいであった。しかし、開発意図が不明瞭(ふめいりょう)と評価され、普及することなく終わった。
 コンパクトカセットは民生用および業務用の録音メディアとして広く使われたが、1987年にDAT(デジタルオーディオテープレコーダー)、1989年(平成1)にCD-R(追記型コンパクトディスク)、1992年にMD(ミニディスク)などのデジタル録音メディアが出現すると、主力の座はこれらにとってかわられ、さらに現在はデジタルボイスレコーダー(ICレコーダー)などの個体デジタル録音がオーディオ録音の主力になっている。しかし、コンパクトカセットは消滅したわけでなく、民生用オーディオ録音・再生の分野で根強く使い続けられている。[吉川昭吉郎]

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