磁気テープ(読み)じきてーぷ(英語表記)magnetic tape

翻訳|magnetic tape

日本大百科全書(ニッポニカ) 「磁気テープ」の意味・わかりやすい解説

磁気テープ
じきてーぷ
magnetic tape

強磁性媒体を表面に付着したテープに電子情報を磁気的に記録するもので、大容量記録を電源を除いても低コストで安全に長期間保持できる。テープにはオーディオ用、ビデオ用とデータ/コンピュータ用のものがあり、前二者にはアナログ記録方式用とデジタル記録方式用のものがある。

 磁気テープの全厚数~数十マイクロメートルの9割以上を占めるベースフィルム(ポリエチレンテレフタレートなど)に、安価・普及型テープはガンマ酸化鉄(γ-Fe2O3)の磁性粉体を、ビデオテープはさらにこれにコバルトを含めたものを塗布したもので、高記録密度用のメタルテープはコバルト・ニッケルなどを蒸着したものである。粉体のバインダーカートリッジには樹脂を用いている。テープの製法は、普通まず片面または両面に磁性媒体を付着したフィルムをつくり、これを幅3、4メートルに裁断してリールに巻き取る。さらに、使用目的に応じた幅で裁断して規格化されたプラスチック容器やリールに装着する。

 テープへの電子情報の書き込みは、軟磁性体にコイルを巻いた磁気ヘッドの微小ギャップをテープに近づけ、コイルの信号電流によってテープ面の磁性媒体を磁化する。こうして、情報はテープの膜面に微小磁石を並べたような形で、水平面(長手)方向に記録される。読み出しはテープに書き込まれた磁界をコイルの誘導電流として、または、磁気効果素子の抵抗変化として検知する。消去にはやや強い高周波の磁界を加え、微小磁石の並びを崩して元に戻す。

 音声のアナログ記録のテープレコーダー用としては、オープンリールの1/4インチ(約6ミリメートル)幅のもの、業務用には最大2インチ幅のマルチトラックレコーダーがあり、オーディオカセットや留守番電話機用などのマイクロカセットは3.8ミリメートル、デジタル音声記録には3/4インチのカセットテープ、業務用マルチトラック用には1/2インチのほか、8ミリメートル幅のテープがある。ビデオ用には初期のオープンリールの2インチ、続く1インチから統一型の1/2インチ幅が、ビデオカセットには家庭用のVHSの1/2インチ、8ミリメートル幅のテープのほか、業務用のU規格の3/4インチ、VX方式の1/2インチ幅が、コンピュータ用には2.1インチのオープンリールのほかにカセットの1/2・1/4インチ、8・3.8ミリメートル幅のものがある。

 磁気テープは1881年にデンマークのパウルセン(ポールセン)が開発した録音・再生装置テレグラフォンに用いたピアノ線が原型である。1927年にはオーストリアの科学者プロイメル(フロイマー)Fritz Pfleumer(1881―1945)が磁性粉粒子を紙テープに塗布した磁気テープを発明。1935年にはプラスチックテープ基板の録音・再生装置がマグネトフォンの名でドイツで開発・展示され、ヒットラーはこれを宣伝に利用。第二次世界大戦後、アメリカに持ち込まれ、磁気テープの生産が世界で活発化した。1962年にはオランダのフィリップス社はカートリッジ化したコンパクトカセットを発表。現在、バックアップ用などに記録の高密度化が進められている。

[岩田倫典]

『小野京右・多川則男他著『記憶と記録――情報機械学のすすめ』(1995・オーム社)』『貞重浩一著『情報記録のエレクトロニクス』(2001・コロナ社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「磁気テープ」の意味・わかりやすい解説

磁気テープ
じきテープ
magnetic (recording) tape

プラスチックのテープ (主としてポリエステル樹脂) 上に磁性粉を塗布したもの。電気信号を磁化の強弱に変えて記録する磁気記録の媒体として音声録音用,録画用,コンピュータの外部記憶装置用などに利用されている。寸法・性能には種々の規格があるが,外観上,1個の露出したリールに巻かれているオープンリール型,供給リールと巻取りリールが1組になってケースに収納されているカセット型,1個のリールにテープがエンドレスに巻かれ,ケースに収められているカートリッジ型に大別される。塗布されている磁性粉には主として酸化鉄 (ガンマ・ヘマタイト) γ-Fe2O3 の針状微粉末が使用されているが,その他,最近では酸化クロム CrO2 ,純鉄などの粉末も使われている。塗布厚は規格によってかなり異なるが,約 10μm 程度である。

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