改訂新版 世界大百科事典 「サシガメ」の意味・わかりやすい解説
サシガメ (刺亀)
assassin bug
半翅目異翅亜目サシガメ科Reduviidaeに属する昆虫の総称。サシガメ科は全世界に31亜科5000種,日本からは10亜科約80種が記録されている。肉食性で多くは他の昆虫を吸食するが,哺乳類の血液を吸う種類もいる。害虫を吸う種類は天敵として保護する価値があり,わざわざ飼育して放つこともある。体は多形で,やや扁平のことも多く,ときに糸状で肢の細長い種もいる。突出した複眼の内側後方に2個の単眼がある。触角は一般に4節であるが,ときに8節に分節する。前胸背の腹面前方に必ず発音のためのやすり溝があり,短く曲がった口吻(こうふん)の先でここをこすって発音する。翅はふつうよく発達するが,短翅,無翅の型もある。肢は細長く有毛か有刺で,跗節(ふせつ)は1~3節である。
日本の代表種には次のものがある。アシナガサシガメSchidium marcidumは全体淡褐色で,体長17mmくらい。体は細い棒状で肢も細く長い。ふつう無翅である。前肢はカマキリ状の捕獲肢となっている。アカシマサシガメ類Haematoloechaは体長10mm内外の赤色と黒色の種類で,地表にすみ,ヤスデ類を好食する。オオトビサシガメIsyndus obscurusは大型な褐色の種類で,指でとらえると口吻で刺すことがある。ヤニサシガメVelinus nodipesは体長14mm内外で,黒色。肢からやにを出し,体につける習性がある。原則として両性生殖で,不完全変態をする。幼虫はマツの樹幹などで集団越冬する。オオサシガメ類Triatomaは熱帯地方に多く,人血を吸い,シャガス病を媒介する衛生害虫である。
執筆者:長谷川 仁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報