ロシアの作曲家リムスキー・コルサコフのオペラ。7場。台本は作曲者とベルスキー。1898年モスクワ初演。コルサコフはすでに20代の前半に故郷ノブゴロドに伝わる海洋伝説に基づいて同名の交響詩(作品5)を作曲しているが、それから約30年後に、ふたたびこの素材を用いてオペラを書くことになった。交響詩の旋律動機を借用しているとはいえ、フランツ・リストの影響を強く受けた初期の作品に比べて、ここではロシアの古い語り物音楽(ブイリーナ)の要素を積極的に取り入れて民俗色の濃い作品に仕上げている。ブイリーナ歌手サトコが海王の娘ボルフォアの助力を得て海に乗り出して数奇な運命をたどるという、メルヘンの世界を巧みに音楽で描いたこのオペラは、とりわけ第4場の「インドの歌」で有名である。
[三宅幸夫]
…一時,創作上の停滞期を迎えたが,チャイコフスキーの死後(1893)ふたたび異常な創作力の回復をみせて,毎年のように新作オペラを発表した。そのなかには,《サトコ》(1896),《皇帝の花嫁》(1898),《皇帝サルタンの物語》(1900),《金鶏》(1907)など,今日まで上演される話題作も多い。晩年に書き残した回想録《わが音楽の生涯の年代記》は貴重な歴史的記録である。…
…グリンカの抒情的旋律と色彩的管弦楽法,ダルゴムイシスキーの叙唱を重視するリアリズムの手法は,彼らの表現手段の基礎になった。オペラの分野ではムソルグスキーの《ボリス・ゴドゥノフ》(1869)と《ホバンシチナ》(1880),A.P.ボロジンの《イーゴリ公》(1890初演),リムスキー・コルサコフの《雪娘》(1881)や《サトコ》(1896)などがあるが,大衆の場面に重要な意味を与えた点に独自な劇作法を指摘できる。 管弦楽の分野では絵画性と風俗描写などを特徴としてあげることができるが,ボロジン(二つの交響曲と交響詩《中央アジアの草原にて》(1880)など)とバラーキレフ(《三つのロシアの歌の主題による序曲》(1858),交響詩《タマーラ》(1882)と《ルーシ》(1887)など)はロシア管弦楽の確立者の一翼をになっているし,リムスキー・コルサコフ(《スペイン奇想曲》(1887),《シェエラザード》(1888)など)の色彩豊かな管弦楽法はロシア音楽の古典になった。…
※「サトコ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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