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シニフィアン signifiant

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

シニフィアン
signifiant

言語学用語。「能記」などと訳される。言語記号表現面 (音のイメージ,聴覚映像) をさすもので,それに対し言語の内容面 (意味,概念) をシニフィエ signifié「所記」という。両者は言語体系内で分節された記号 (シーニュ) を構成する2側面で,互いの存在を前提としてのみ存在する。ソシュールは両者を「はさみを入れて切取った紙の一片の表と裏」にたとえて分離不能とし,またその切取り方は恣意的であるとして,「普遍的純粋観念とそれを表わす物質音の結合」と考えられてきた従来の言語観を否定,記号学をはじめさまざまな分野に影響を与えた。

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知恵蔵の解説

シニフィアン

ソシュール言語学のキーワード。シニフィアンは1つの言葉のもつ「音」の側面を、シニフィエはその「意味」の側面を指す。例えば、犬という語には、[イヌ]という音の側面(シニフィアン)と[4本の足で歩き、ワンワンと吠える等]のイメージや意味の側面(シニフィエ)がある。この2つはその言葉を使う者には一体化しているが、同じ犬の意味を担う音でも、日本語では[イヌ]、英語では[ドッグ]となる。シニフィアンとシニフィエには絶対的なつながりはないのだ。また、犬-野犬-山犬-狼といった語同士のつながりを考えてみると、例えば、[ヤマイヌ]という音が廃れてなくなれば、野犬や狼の意味が広がって山犬の意味をカバーする。つまり、犬-野犬-山犬-狼という分節はなんら絶対的なものではなく、犬-野犬-狼という分節に変化しうるようなものなのである。このように考えると、世界や事物の秩序とは、客観的なものではなく、むしろ、言語による分節がつくる一定の見方にすぎないことがわかってくる。客観それ自体の秩序を言葉が写し取っているという考えを否定するこの主張は、20世紀の思想に大きな影響を与えた。

(石川伸晃 京都精華大学講師 / 2007年)

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大辞林 第三版の解説

シニフィアン【signifiant】

ソシュールの用語。言語記号の音声面。能記。 → シニフィエ

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世界大百科事典内のシニフィアンの言及

【記号】より

…これら類似連合と接近連合の各働きと両者の相関のぐあいは,日常言語と詩的言語では異なるし,文化のタイプに関係づけられることもある。 ソシュールは語という記号が聴覚映像と概念,あるいは〈意味するもの(シニフィアンsignifiant)〉と〈意味されるもの(シニフィエsignifié)〉の結合と考えた。この結合の関係は恣意的であり,机を〈机〉と呼ぶべき必然性はなく,desk(英語),Tisch(ドイツ語)とも呼ぶことができる。…

【ソシュール】より

…言語とは,人間がそれを通して連続の現実を非連続化するプリズムであり,恣意的(=歴史・社会的)ゲシュタルトにほかならない。したがって,言語記号は自らに外在する指向対象の標識ではなく,それ自体が〈記号表現〉(シニフィアンsignifiant)であると同時に〈記号内容〉(シニフィエsignifié)であり,この二つは互いの存在を前提としてのみ存在し,〈記号〉(シーニュsigne)の分節とともに産出される(なお,かならずしも適切な訳語とはいえないが,日本における翻訳紹介の歴史的事情もあって,signifiantには〈能記〉,signifiéには〈所記〉の訳語がときに用いられる)。これはギリシア以来の西欧形而上学を支配していたロゴス中心主義への根底的批判であり,この考え方が次に見る文化記号学,文化記号論の基盤になったと言えよう。…

※「シニフィアン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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