ソビエト・西ドイツ武力不行使条約(読み)そびえとにしどいつぶりょくふこうしじょうやく

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ソビエト・西ドイツ武力不行使条約
そびえとにしどいつぶりょくふこうしじょうやく

1970年8月1日モスクワで署名された「ソビエト社会主義共和国連邦ドイツ連邦共和国との間の条約」(いわゆるモスクワ条約、1972年6月3日発効)をさす。米ソ間の緊張緩和を背景に、1969年10月当時の西ドイツにおけるブラント政権成立後8か月に及ぶ交渉を重ねたのち結実した。

 条約は前文と5か条からなり、第1条で「両締約国は、ヨーロッパの状態の正常化と全ヨーロッパ諸国間の平和的関係の発展を促進する」努力を表明し、「その際本地域に現存する状態から出発する」と規定するとともに、第2条で、「問題をもっぱら平和的手段で解決し」「武力による威嚇または武力の行使は行わない」とうたっている。本条約が武力不行使条約とよばれるのはこのためだが、単なる武力不行使以上の誓約を含むものであることは、第3条が、「全ヨーロッパ諸国の領土保全」を「無条件に尊重し」「何人(なんぴと)に対しても何らの領土要求を現在および将来にわたって行わない」と述べていることによって明らかである。つまり戦後ヨーロッパの領土的現状の承認が本条約の根幹をなしているといえよう。本条約成立後、戦後の東西関係は大きく進展した。

[深谷満雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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