タヌキソコギス(読み)たぬきそこぎす(英語表記)spiny sucker eel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タヌキソコギス」の意味・わかりやすい解説

タヌキソコギス
たぬきそこぎす / 狸底義須
spiny sucker eel
[学] Lipogenys gillii

硬骨魚綱ソコギス目タヌキソコギス科に属する海水魚。三陸地方沖、仙台湾沖、ニュージーランド、オーストラリア南東部沖、ハワイ諸島などの太平洋と、モロッコ、ニュー・イングランド沖などの北大西洋に分布する。体は伸長し、尾部は後方に向かってだんだんと細くなる。頭部は低くて、いくぶん側扁(そくへん)し、前端が丸い。目はよく発達する。口は吻(ふん)の腹面に開き、小さい吸盤状で、上唇に厚くてひだのある皮褶(ひしゅう)(皮膚のしわ)がある。歯はない。主上顎骨(しゅじょうがくこつ)の後端は鋭く下方へ曲がる。吻の腹面の上唇の前に多数の小皮弁(皮質突起)がある。背びれは体の中央部より前で、肛門(こうもん)上方に位置し、その基底は著しく短い。背びれの前から4~8本は硬くて棘(きょく)状で、後方に向かって長くなる。残りの3~5軟条は柔らかく節がある。前の3棘を除いて鰭膜(きまく)でつながる。臀(しり)びれは基底が長く、背びれの始部下方から始まり、尾端まで伸びる。前部に26~51棘、後部に80~106軟条がある。尾びれはない。鱗(うろこ)は小さい。側線は鰓孔(さいこう)の上端付近から尾端中央まで直線状に伸びる。体は淡褐色または灰色で、鰓腔(さいこう)(えらが入っている空所)の内面暗褐色全長は40センチメートルほどになる。水深350~200メートルの海底にすみ、吸盤状の口で沈殿した有機物を食べる。ソコギス科Notacanthidaeに似るが、ソコギス科は背びれ基底がきわめて長く、分離した多数の背びれ棘をもつこと、口が吸盤状でないことなどで容易に本科と区別できる。

[尼岡邦夫 2019年11月20日]

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