改訂新版 世界大百科事典 「チャンドラー周期」の意味・わかりやすい解説
チャンドラー周期 (チャンドラーしゅうき)
Chandler's period
チャンドラー運動ともいう。1891年にアメリカのS.C.チャンドラーの発見した,極運動の一成分の周期で約430日。流体核をもつ地球回転理論の重要な検証の一つ。剛体地球の極運動では周期が305日になることをL.オイラーは1765年に予言していた。観測された周期は,予言値に比べて約130日長く大問題となったが,アメリカの天文学者S.ニューカムは地球を弾性体と考えればこの周期の伸びが説明できることを証明した。現在では,地球の構造を考慮して,ほぼ弾性的変形をする部分(地殻とマントル)によって,オイラー周期が約120日伸び,流体核の存在によって約30日縮み,海洋の影響で約30日伸びて観測される周期430日になると考えられている。チャンドラー運動の振幅は一定ではなく,かつ位相も変化している。さらに極運動には年周極運動や永年変化もあるので,チャンドラー周期を正確に決定することはむずかしい問題となっている。
執筆者:若生 康二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報