ツメダニ

改訂新版 世界大百科事典 「ツメダニ」の意味・わかりやすい解説

ツメダニ

前気門亜目ツメダニ科Cheyletidaeに属するダニの総称大部分が自由生活性かつ捕食性で,貯蔵食品や室内塵に発生したコナダニ類やチリダニ類など小型のダニ類を捕食するために二次的に発生する。この意味から一見益虫のように考えられるが,食品中には異物として検出されたり,ヒトに移行して皮疹を起こしたりする。体長0.2~1.0mm,卵円形の胴部は乳白色を呈し,境界溝によって前胴部と後胴部に区別される。触肢はよく発達して強大で,末端に巨大なつめや櫛(くし)状の毛があるのが特徴。世界各国に分布し,日本にも広く見られるホソツメダニCheyletus eruditusは貯蔵食品やわらなどに見いだされ,小昆虫類やほかのダニ類を捕食する。その他,フトツメダニC.fortisアシナガツメダニCheletomorphe lepidopterorumなど数種の近似種が知られており,穀類や畳に発生して,強いかゆみを伴った皮膚炎や人体内ダニ症の原因となっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツメダニ」の意味・わかりやすい解説

ツメダニ
つめだに / 爪蜱

節足動物門クモ形綱ダニ目前気門亜目ツメダニ科Cheyletidaeに属するダニの総称。体長はほぼ0.7ミリメートル以下。体色は白色または淡赤色で、とくに顎体(がくたい)部の触肢は強大で、つめも大きく、他種とよく区別できる。各種の食品をはじめ、哺乳(ほにゅう)類の体表、土壌、植物からもみいだされ、それぞれの環境にいるほかのダニ類やそのほかの節足動物について体液を吸う。発育史は、雌では卵→幼虫→第1若虫→第2若虫を経て雌成虫になるが、雄では第1若虫からすぐ雄成虫になる。クワガタツメダニ、ホソツメダニ、フトツメダニ、ツヨツメダニなどは貯蔵食品や畳に発生する。アシナガツメダニ、タタミツメダニはよく畳にみられる。ヤソツメダニ、ウサギツメダニ、ネコツメダニCheyletiella blakeiはネズミ、ウサギ、ネコなどの体表からみいだされる。また、これらのダニはしばしばヒトに皮膚炎をおこさせる。食品に発生したコナダニにより皮膚炎をおこす例があるが、これはコナダニを捕食するツメダニによることが多いとされている。

[松本克彦]

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世界大百科事典(旧版)内のツメダニの言及

【ダニ(蜱∥蟎∥壁蝨)】より

…ツツガムシは日本各地に散在するツツガムシ病の媒介者として有名である。家屋内で人を刺すのはイエダニやツメダニが主であり,食品倉庫などではシラミダニによる被害もときとして起こる。家畜,家禽にもダニが多く寄生し,放牧地の牛馬にはマダニ,ニワトリ,ハト,小鳥にはワクモやトリサシダニがつく。…

※「ツメダニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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