コナダニ(読み)こなだに(英語表記)acaroid mite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コナダニ」の意味・わかりやすい解説

コナダニ
こなだに / 粉蜱
acaroid mite
grain mite
stored products mite

節足動物門クモ形綱ダニコナダニ上科Acaroideaに属する一群のダニの総称。コナダニ科、ニクダニ科、サトウダニ科、ホシカダニ科などが含まれ、成虫でも0.7ミリメートル以下の微小なダニである。気門がなく、体は乳白色または淡褐色で、体表が平滑であり、種に一定した長毛を生じている。口器は体の前端に突出し、太く短いはさみ状の鋏角(きょうかく)をもつ。脚(あし)はよく発達し、基節が埋没して5節からなる。発育期は卵、前若虫(ぜんじゃくちゅう)(第1若虫)、後(こう)若虫(第3若虫)、成虫(雄、雌)からなるが、ある種では前若虫から特殊な形態をしたヒポプス(移動若虫)を形成することがある。これは栄養、温度、湿度などが関連して形成されるらしいが、条件が整えば後若虫となって普通の発育を行う。コナダニは環境条件がよいと10日前後で卵から成虫に発育して産卵を始めるので、増殖が盛んで大発生することがある。この条件は種類によって異なるが、ほぼ25~28℃、相対湿度75~85%、餌(えさ)の水分含量15~20%ぐらいが繁殖に適している。梅雨明けの時期と晩夏から初秋のころによく大発生がみられる。この種の多くは貯蔵食品(穀類穀粉、砂糖、みそ、チーズ、菓子類、干し魚やその他の乾燥食品)に発生し、多くの損害を与える。そのほか畳に発生したり、室内の塵(ちり)や鳥の巣に発見されることもある。種類によって発生食品に好みがあり、サトウダニ(サトウダニ科)はみそ、砂糖、乾燥果実などに発生し、コウノホシカダニ(ホシカダニ科)は干し魚に好んで発生するが、ケナガコナダニ(コナダニ科)は発生食品の範囲が広く、ヒトの尿や糞(ふん)、喀痰(かくたん)などにみいだされ、人体内ダニ症の原因とみられることがあるが、医学的にはまだ解明されていない。また、コナダニ類が大発生して皮疹(ひしん)を生ずるといわれるが、実際にはコナダニを捕食するツメダニやその他のダニによることが多いらしい。ダニの発生を防ぐには殺ダニ剤の散布もあるが、一般には食品の冷蔵、乾燥、環境の清掃、などを心がけるのがよい。

[松本克彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コナダニ」の意味・わかりやすい解説

コナダニ
Acaridae; acarid mite

クモ綱ダニ目コナダニ科に属する種類の総称。広義にはニクダニ科などいくつかの科を含めて総称する。体長 0.3~0.8mm。体は卵形で軟らかく,乳白色ないし淡黄白色である。砂糖,味噌,小麦粉,米,ビスケット,チーズ,煮干しなど,ほとんどすべての貯蔵食品のほか,畳などにも発生する。卵→幼虫→第1若虫→第2若虫→成虫の順に成育し,温度 25~28℃,湿度 75~85%ぐらいの好条件下では 10日間ほどで成虫になり,ただちに産卵を始める。低温度,低湿度,食物不足など環境条件が悪化すると,第2若虫に次いでヒポプスと呼ばれる第3若虫が出現する。畳に大発生するケナガコナダニ Tyrophagus putrescentiae,貯蔵小麦の害虫として世界的に有名なニクダニ科のサヤアシニクダニ Glycyphagus destructorなどが知られている。大発生した場合は薬剤の散布または薫蒸が必要であるが,完全に駆除することはむずかしい。 (→ダニ類 )

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