コナダニ
無気門亜目コナダニ上科Acaroideaに属し,一見すると白い粉のように見える小さなダニの総称。ほとんどの種類が自由生活を営み,多くの日常食品あるいは貯蔵食品に発生する。その他室内の畳または塵の中など広範囲に生息する。体長0.2~0.5mm,白色ないし黄白色,半透明で外皮は薄く軟らかい。コナダニ類は一般に卵,幼ダニ,前若ダニ,後若ダニ,親ダニの5期からなる。しかし,環境が悪くなると前若ダニはヒポプスhypopusと呼ばれる移動性若ダニに変化し,再び環境がよくなると後若ダニに変化するものがある。卵から親ダニに発育するまでの期間は環境条件がよければ2週間前後である。コナダニ類は食品に発生する害虫であるばかりでなく,ヒトに直接病害を及ぼすことがある。皮膚炎としてバニラ皮膚炎vanillism,コプラ皮膚炎copra itch,パン屋皮膚炎baker's itch,乾物屋皮膚炎grocer's itchなどがあり,これら皮膚炎はバニラ豆,ヤシのコプラ,小麦粉その他の乾物を扱う人々に発生し,いずれもコナダニ類やそれを捕食するツメダニ類によることが知られている。人体内ダニ症としては消化器障害として下痢,腹痛を起こす消化器ダニ症intestinal acariasis,血尿を主徴とした腎炎様症状を示す泌尿器ダニ症urinary acariasisおよびチリダニ類とともに気管支炎あるいは喘息(ぜんそく)症状を起こす呼吸器ダニ症pulmonary acariasisなどが知られている。これらの病害はダニの種類や体の中に入る量にもよるが,ダニによる機械的刺激のほかに,抗原として作用するアレルギー反応のこともある。日本でもっともふつうに見いだされる種類はケナガコナダニで発生品目も多岐にわたる。その他,サトウダニは砂糖,みそなど,サヤアシニクダニは干魚,削り節などやや限られた食品に発生する。環境的駆除を主体とし,まずダニの侵入を防ぎ繁殖を防止する。次いで化学的には薫蒸,物理的方法としては加熱,乾燥あるいは冷凍が有効である。
執筆者:金子 清俊
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コナダニ
こなだに / 粉蜱
acaroid mite
grain mite
stored products mite
節足動物門クモ形綱ダニ目コナダニ上科Acaroideaに属する一群のダニの総称。コナダニ科、ニクダニ科、サトウダニ科、ホシカダニ科などが含まれ、成虫でも0.7ミリメートル以下の微小なダニである。気門がなく、体は乳白色または淡褐色で、体表が平滑であり、種に一定した長毛を生じている。口器は体の前端に突出し、太く短いはさみ状の鋏角(きょうかく)をもつ。脚(あし)はよく発達し、基節が埋没して5節からなる。発育期は卵、前若虫(ぜんじゃくちゅう)(第1若虫)、後(こう)若虫(第3若虫)、成虫(雄、雌)からなるが、ある種では前若虫から特殊な形態をしたヒポプス(移動若虫)を形成することがある。これは栄養、温度、湿度などが関連して形成されるらしいが、条件が整えば後若虫となって普通の発育を行う。コナダニは環境条件がよいと10日前後で卵から成虫に発育して産卵を始めるので、増殖が盛んで大発生することがある。この条件は種類によって異なるが、ほぼ25~28℃、相対湿度75~85%、餌(えさ)の水分含量15~20%ぐらいが繁殖に適している。梅雨明けの時期と晩夏から初秋のころによく大発生がみられる。この種の多くは貯蔵食品(穀類、穀粉、砂糖、みそ、チーズ、菓子類、干し魚やその他の乾燥食品)に発生し、多くの損害を与える。そのほか畳に発生したり、室内の塵(ちり)や鳥の巣に発見されることもある。種類によって発生食品に好みがあり、サトウダニ(サトウダニ科)はみそ、砂糖、乾燥果実などに発生し、コウノホシカダニ(ホシカダニ科)は干し魚に好んで発生するが、ケナガコナダニ(コナダニ科)は発生食品の範囲が広く、ヒトの尿や糞(ふん)、喀痰(かくたん)などにみいだされ、人体内ダニ症の原因とみられることがあるが、医学的にはまだ解明されていない。また、コナダニ類が大発生して皮疹(ひしん)を生ずるといわれるが、実際にはコナダニを捕食するツメダニやその他のダニによることが多いらしい。ダニの発生を防ぐには殺ダニ剤の散布もあるが、一般には食品の冷蔵、乾燥、環境の清掃、などを心がけるのがよい。
[松本克彦]
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コナダニ
Acaridae; acarid mite
クモ綱ダニ目コナダニ科に属する種類の総称。広義にはニクダニ科などいくつかの科を含めて総称する。体長 0.3~0.8mm。体は卵形で軟らかく,乳白色ないし淡黄白色である。砂糖,味噌,小麦粉,米,ビスケット,チーズ,煮干しなど,ほとんどすべての貯蔵食品のほか,畳などにも発生する。卵→幼虫→第1若虫→第2若虫→成虫の順に成育し,温度 25~28℃,湿度 75~85%ぐらいの好条件下では 10日間ほどで成虫になり,ただちに産卵を始める。低温度,低湿度,食物不足など環境条件が悪化すると,第2若虫に次いでヒポプスと呼ばれる第3若虫が出現する。畳に大発生するケナガコナダニ Tyrophagus putrescentiae,貯蔵小麦の害虫として世界的に有名なニクダニ科のサヤアシニクダニ Glycyphagus destructorなどが知られている。大発生した場合は薬剤の散布または薫蒸が必要であるが,完全に駆除することはむずかしい。 (→ダニ類 )
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コナダニ
ダニ目無気門(コナダニ)亜目コナダニ科などに含まれるダニの総称。雌は体長0.4〜0.8mm,雄はやや小さい。体色は半透明乳白色。脚は長く,脛部(けいぶ)には長い剛毛がある。砂糖,みそ,小麦,米,チーズなどの貯蔵食品に繁殖し,ケナガコナダニ,アシブトコナダニ,類縁のサトウダニなど食品害虫がいる。消化器,泌尿器その他人体内ダニ症の病原ともなる。コナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニなどは室内のほこりにまじって,ぜん息,鼻炎のアレルゲンとなる。
→関連項目ダニ
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世界大百科事典(旧版)内のコナダニの言及
【ダニ(蜱∥蟎∥壁蝨)】より
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[形態]
体長0.2mm~2cm,多くは0.5~1mmと小さい。なお,17世紀ころのフランスではラ・フォンテーヌや,パスカルにその用例があるように,チーズなどにつくコナダニcironは,知りうるかぎりのもっとも微細なものと考えられていた。シラミやノミは昆虫であるが,ダニは昆虫とはまったく別の動物で,頭,胸,腹が融合して一体となり,触角も複眼も翅もなく,歩脚は4対ある。…
※「コナダニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」