改訂新版 世界大百科事典 「テンレック」の意味・わかりやすい解説
テンレック
tenrec
tail-less tenrec
Tenrec ecaudatus
ハリネズミに似た食虫目テンレック科の哺乳類。マダガスカルとコモロ諸島に分布。体長26~39cm,尾長1~1.6cm,体重1.6~2.4kg。体は太く四肢が比較的短く,吻(ふん)が長く突出する。全身黄褐色の剛毛と,褐色みの強い針状毛におおわれる。森林や低木林の下ばえの中で生活し,岩の下や木のうろに巣をつくる。夜行性で,午後6~9時と午前1~5時の2回,活動のピークがあることが知られている。昆虫やミミズなどが主食だが,少量の植物質やネズミなども食べる。恒温性は不完全で,ふだんの体温は28~29℃だが,24℃から35℃まで変化する。乾季あるいは南半球の冬には地中の穴で休眠する。妊娠期間56~64日で,12~1月に1産1~32子,平均15子を生む。飼育下での寿命は約5年。
近縁種には水生に適したミズテンレックLimnogale mergulus(英名web-footed tenrec),全身が針状毛でおおわれたハリテンレックSetifer setosus(英名greater hedgehog-tenrec)など30種ほどがあるが,いずれもマダガスカルに産する。なお,近年ではアフリカのポタモガーレ科(2属3種)をテンレック科に含めることがある。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報