デエシス(英語表記)Deësis; Entreaty

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デエシス」の意味・わかりやすい解説

デエシス
Deësis; Entreaty

キリスト教美術主題玉座にすわる審判キリストを中心に,左右に全人類に代って取次ぎを請う聖母マリアと洗礼者ヨハネとが表現された図像。最後の審判図の中心グループであるが,独立して3人像として表わされることが多い。この図像はビザンチン美術発展,ギリシア教会イコノスタシスにしばしば見出され,ヨーロッパには 12世紀に伝わった。例としてイスタンブール,ハギア・ソフィア大聖堂階上廊モザイク (13世紀) がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「デエシス」の意味・わかりやすい解説

デエシス
でえしす
Deèsis ギリシア語

「要求」「祈願」「懇願」「嘆願」を意味するが、狭義には、最後の審判にあたるキリストを中心にして、左右に聖母マリアと洗者聖ヨハネなどの代願者を配し、彼らがキリストに人類の罪の許しと救いを求めている聖画像の図柄をさす。古来、多くの教会に、この画題による聖画、彫刻がみられるが、ビザンティン式教会では後陣に、西欧の教会では正面に設けられることが多い。フランスのアミアン大聖堂正面の浮彫りが有名。

[磯見辰典]

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世界大百科事典(旧版)内のデエシスの言及

【イエス・キリスト】より

…前者は例えば〈聖母子〉(いくつもの類型がある),〈教師キリスト〉(右手で祝福のしぐさをし,左手に聖書を持ち,単独で,あるいは弟子たちに囲まれて教えを説く姿),〈磔刑のキリスト〉(受難ないし贖罪の教義を示す。聖母とヨハネその他を伴うこともある),〈勝利者キリスト〉(悪の象徴を踏まえる姿),〈審判者キリスト〉〈栄光のキリスト〉(《ヨハネの黙示録》に記された四つの生き物――天使,獅子,牡牛,鷲――あるいは天使を伴う),〈デエシスdeēsis〉(罪人たちの祈りのとりなしをする聖母とバプテスマのヨハネを左右に伴ったキリスト),〈空の御座またはエティマシアetimasia(ヘトイマシアhetoimasia)〉(〈最後の審判〉の到来を待つ場面)などである。これらは聖堂の祭室半円蓋,主円蓋,入口上部を飾る半円形のティンパヌムなど,教会の最も重要な場所を占めて,信徒に教義の重要なものを視覚的に理解させる役割を果たした。…

※「デエシス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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