ナゲナワグモ(英語表記)bolas spider
Mastophora bisaccata

改訂新版 世界大百科事典 「ナゲナワグモ」の意味・わかりやすい解説

ナゲナワグモ
bolas spider
Mastophora bisaccata

コガネグモ科のクモ。第1脚先端より粘球のついた糸を垂らし,その粘球を近くを通りかかったガにぶつけてとらえる投縄式捕虫行動を行うのでこの名がある。英名は垂らした糸と粘球がインディアンの使用するbolasという動物捕獲用の道具に似ていることによる。体長は雌8~14mm,雄2~3mm。アメリカ東・南部のコネチカットノース・カロライナ,フロリダ,アーカンソー州などに広く分布している。

 コガネグモ科のナゲナワグモ属,ウオツリグモ属,イセキグモ属に含まれるクモには投縄式捕虫行動をとるものが多い。これらは特定の種類のガの雄を誘引する物質を出しているといわれる。ウオツリグモはオーストラリアに,イセキグモはアジアの温帯熱帯地域および太平洋の赤道付近の島々に分布し,日本にはマメイタイセキグモ,ムツトゲイセキグモの2種が生息している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナゲナワグモ」の意味・わかりやすい解説

ナゲナワグモ
bolas spider

クモ綱クモ目コガネグモ科のクモのうち,投げ繩式捕虫行動をする種類の総称狭義にはアメリカ産の Mastophora bisaccataをさす。体長 1cm前後で,腹部が大きく数対の突起をもつものが多い。昼間は草木の葉裏に静止し,夕方から夜にかけて第1脚または第2脚の先から粘球のついた糸を垂らして回転させ,近寄ってきたガにぶつけてからめとる。誘引物質を出して特定のガの雄を集めるといわれる。世界のおもに熱帯でナゲナワグモ属やイセキグモ属など4属約 30種が知られており,日本には本州南部以南にマメイタイセキグモ Ordgarius hobsoniおよびムツトゲイセキグモ O.sexspinosusの2種が分布する。 (→クモ類 )

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世界大百科事典(旧版)内のナゲナワグモの言及

【クモ(蜘蛛)】より

…そのために交尾期になると雌の周辺には,数匹の雄がある距離をおいて集まり,ひたすらその機会を待つ。
[獲物のとり方]
 クモが餌をとらえる方法も,ふつうの網でとるもののほか,池の端で2本の前肢で水面をたたき,浮上してくる小魚をつめでひっかけて釣るハシリグモDolomedes triton,網を4本の前肢でささえ,下を通る虫の上にぽいとかぶせるメダマグモDinopis spinosa,粘球を糸の先にぶら下げ,これをぐるぐる回して,通過する虫に投げかけるナゲナワグモMastophora bisaccata,花の上に脚を広げて静止し,虫が触ってもじっとしていて,虫が安心してみつを吸い始めると,がばっととらえるハナグモMisumena tricuspidatusなどのように多種多様である。
[クモの巣]
 クモの種類が異なれば,網の形も異なる。…

※「ナゲナワグモ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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