現金通貨と中央銀行預け金との合計額をさす。直訳して〈強力通貨〉とか〈高権貨幣〉ということもあるが,適切な訳語ではない。しいて訳すならば,内容に即して中央銀行通貨である。また,それが銀行の信用創造の基礎となることから,フリードマンがこれを基礎通貨(ベース・マネーbase money)とよぶのは適切であろう。一般に通貨の流通の過程をみると,銀行の信用創造によって預金通貨が顧客に供給され,その一部が引き出されて現金通貨として流通する。この場合,銀行組織全体としてのマネー・サプライM(現金通貨Cと預金通貨Dの合計,M=C+D)の大きさは,現金・預金比率c=C/D,預金準備率r=R/D(Rは銀行の支払準備)を一定とすれば,ハイパワード・マネーHの大きさによる。この関係は次式によって示される。
M/H=C+D/R+C=1+c/r+c
すなわちM=H[1+c/r+c]となる。
これは貨幣乗数式あるいは信用乗数式とよばれる。すなわち,預金準備率rや現金・預金比率cが小さいほど,またハイパワード・マネーHが大きいほど,マネー・サプライMは大きくなる。現金・預金比率cは社会の支払慣行によるため短期的には変わらないとすれば,金融政策のねらいは,政策手段を活用して,ハイパワード・マネーHや預金準備率rを動かし,マネー・サプライMを調節する点にあるといえる。
→金融政策 →公開市場操作
執筆者:石田 定夫
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…具体的には,中央銀行が公開市場において手形,政府短期証券(大蔵省証券=TBなど),国債などの売買を行い,中央銀行信用やベース・マネー(現金と中央銀行預け金の合計。マネタリー・ベース,ハイパワード・マネーともいう)を増減させることを指す。 ここでいう公開市場とは,銀行間市場inter‐bank marketと対置される概念で,日本のコール市場,手形売買市場,あるいはアメリカのフェデラル・ファンド・マーケットのように,中央銀行と民間銀行という銀行だけが参加できる銀行間市場とは異なり,銀行以外の企業や個人も参加できる金融市場を指す。…
※「ハイパワードマネー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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