日本大百科全書(ニッポニカ) 「マネーサプライ」の意味・わかりやすい解説
マネーサプライ
まねーさぷらい
money supply
銀行以外の民間部門が保有する通貨残高のこと。通貨供給(量)ともいう。以前は海外でもマネーサプライといわれていたが、通貨量に関する認識の変化などにより、しだいにマネーストック(通貨残高)、マネタリーアグリゲート(通貨集計量)といった統計名称が使われるようになった。日本でも、2008年(平成20)の通貨統計の見直しの際、海外との共通認識からマネーストックにとってかわられた。
通貨の範囲をどのように規定するかによって、さまざまなマネーサプライの概念が存在する。日本のマネーサプライ指標の定義も数次にわたって変更されたが、マネーストックに変更する以前のマネーサプライの概念は以下の通りである。まず、現金通貨(日本銀行券、補助貨)と預金通貨(当座、普通、通知、別段の各預金)の合計がM1であり、これは交換手段機能を重視する伝統的概念であった。M1と定期性預金(定期預金、定期積金)の合計がM2である。M2は、定期性預金と預金通貨間のシフトを反映して拡張された概念であり、価値貯蔵手段機能も強調した。M2と貯蓄性預金(郵便局、農業協同組合、漁業協同組合、信用組合、労働金庫の預貯金ならびに金銭信託、貸付信託の信託元本)の合計がM3である。さらに広義の概念として導入されたのが広義流動性であり、M3に債券現先、金融債、政府短期証券を含む国債、投資信託、金銭信託以外の金銭の信託、外債が加えられた。
従来、日本銀行が公表していたマネーサプライ統計は、前記のM1、M2+CD(譲渡性預金)、M3+CD、広義流動性、そして中央政府を含む国内非金融部門の総資金調達残高を表す最広義信用集計量の5種類であり、これらのうち日本銀行はM2+CDをもっとも代表的な統計とみなしてきた。
[金子邦彦]
『石田和彦・白川浩道編著『マネーサプライと経済活動』(1996・東洋経済新報社)』