化学辞典 第2版 「ハドソン則」の解説
ハドソン則
ハドソンソク
Hadson's rule
糖およびその誘導体の構造と旋光性の関係について,C.S. Hadsonらにより見いだされた経験則で,おもに次の三つからなる.【Ⅰ】等旋光度則(isorotation rule):糖のモル旋光度[M](比旋光度×分子量のこと.しばしばその値の1/100で表示する)に対するアノマー炭素位の旋光性への寄与Aとほかの不斉中心の寄与Bとの間には,比較的よい加成性が成り立つ.たとえば,α-およびβ-グルコピラノースの(水中)は,それぞれ+111°,+19°なので,[M]D/100は200°,34°となり,A/100 = +83°,B/100 = +117°が得られる.ヒドロキシ基に対応するA値は,一般に糖の種類にあまり左右されず約+85°,メトキシ基のそれは約+190°(ただし,D-マンノピラノースのように2位のヒドロキシ基がアキシアル位をとるような場合は,それぞれ約+45°,約+150°)であり,他方,B値は芳香族系グリコシド以外は,一般に,D-グルコピラノシル基が約+120°,D-マンノピラノシル基が約+10°,D-ガラクトピラノシル基が約+180°になる.この経験則はオリゴ糖も含めた糖化合物の旋光度の予測,アノマーの立体配置の決定などに役立つ.【Ⅱ】ラクトン則(lactone rule):γ-あるいはδ-ヒドロキシ酸のヒドロキシ基の立体配置が,D(L)であれば,そのヒドロキシ基との間で形成されるラクトンの旋光性はもとの酸のそれより正(負)となる.この経験則は,はじめアルドン酸のラクトンについて認められたが,広くγ-およびδ-ラクトンについても適用できることがわかり,これらラクトンおよびもとの酸の立体配置の決定に利用される.【Ⅲ】アミド則(amide rule):アルドン酸のアミドの旋光度の符号は,α位のヒドロキシ基の立体配置によってのみ決定され,それがDであれば正,Lであれば負となる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報