改訂新版 世界大百科事典 「バイカアマチャ」の意味・わかりやすい解説
バイカアマチャ
Platycrater arguta Sieb.et Zucc.
暖地の山中に生えるユキノシタ科の落葉低木で,バイカウツギ属Philadelphusなどに近縁な植物である。枝は灰白色で,皮は薄く,はげやすい。葉には短柄があり,対生する。葉身は質が薄く,長楕円形,先は長くとがり,基部は狭いくさび形,縁にはまばらに鋭い鋸歯がある。7~8月,枝の先に集散花序をつくり,外側の数個の花は,萼が癒合し,皿状に発達して,楯状の不稔の装飾花となる。白い装飾花は浅く3~4裂した円形,表面は網状脈が目だつ。まばらに数個つく両性花は,萼筒が倒円錐形,萼片は4枚で先がとがる。花弁は4枚,卵形鈍頭で長さ8~10mm,肉厚で,縁は内側に巻き,背面には毛がある。おしべは多数で,花糸は長い。花柱は2本で長く,開出する。子房は下位,中軸胎座にやや垂れ下がった胚珠を多数つける。種子は褐色線形で,両端に翼がある。日本では,東海地方,紀伊半島,四国,九州に分布し,また中国大陸にも産する。バイカアマチャ属Platycraterは1属1種の東アジア特産植物で,遺存的植物と考えられる。葉は茶の代用品に使われ,また欧米ではロックガーデンで植栽される。
執筆者:若林 三千男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報