アマチャ(読み)あまちゃ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アマチャ」の意味・わかりやすい解説

アマチャ
あまちゃ / 甘茶
[学] Hydrangea serrata (Thunb.) Ser. var. thunbergii (Sieb.) H.Ohba
Hydrangea macrophylla Seringe var. thunbergii Makino

ユキノシタ科(APG分類:アジサイ科)の落葉低木で、ヤマアジサイの1変種。コアマチャともいう。茎の高さは60~80センチメートル、葉は先のとがった楕円(だえん)形で長さ5~8センチメートル、茎に対生する。夏に枝先に多数の小花をつける。周辺の中性花の花弁状のものは萼(がく)で、先端が丸みを帯びてややくぼむ。初め青色、のちに紅紫色となる。アマギアマチャvar. angustata (Fr. et Sav.) H.Ohba(var. amagiana Makino)は伊豆半島の山地に自生し、アマチャより葉は狭く、生時から甘味がある。中性花は白色

[星川清親 2021年3月22日]

文化史・利用

4月8日の灌仏会(かんぶつえ)(花祭(はなまつり))に甘茶を用いる習慣は、いつごろ始まったのか明らかではないが、室町時代には単に湯や香湯をかけていたものが、江戸時代に甘茶に変わった。その原形は中国と思われ、中国の『荊楚(けいそ)歳時記』(6世紀)には、釈迦(しゃか)誕生のとき天から甘露水が降ったという伝説が伝えられる。なお、原義から甘茶でなく天茶が正しいとする見方があり、シーボルトもそれをとった。

 甘茶の甘味成分はD-フィロズルチンおよびイソフィロズルチンで、甘味度は砂糖の600~800倍の強さをもつ。フィロズルチンは1890年(明治23)薬学者の丹波(たんば)敬三により甘茶から分離された。甘茶は、アマチャの葉を夏から秋にかけて採取し、日干しにしてから、湿らせて発酵させる。よくもむと甘味を生じるので、これをさらに十分乾燥して仕上げる。なお、生葉には甘味はない。乾燥葉を煎(せん)じて飲用にするほか加工食品甘味料として、使用されることもある。

[湯浅浩史・河野友美・山口米子 2021年3月22日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アマチャ」の意味・わかりやすい解説

アマチャ(甘茶)
アマチャ
Hydrangea macrophylla var. thunbergii

アジサイ科の落葉低木。葉に甘みがあるため古くから日本で栽培されている。ガクアジサイやヤマアジサイなどとも同一種とみなされている。夏に大きな散房花序をつくり,その周辺部に淡青色または白色の 3~4弁の装飾花をもつ点もヤマアジサイとほとんど違わない。葉を乾燥させたものの煎じ汁がいわゆる甘茶で,甘味(成分はフィロズルチン)があり飲料に供する。江戸時代以後,4月8日の灌仏会に釈迦立像に甘茶をかける習慣があるが,これは釈迦生誕のとき,八大竜王が歓喜して産湯に甘露の雨を降らしたという伝説にならったもの。

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