バントゥー諸語(読み)バントゥーしょご(その他表記)Bantu

翻訳|Bantu

改訂新版 世界大百科事典 「バントゥー諸語」の意味・わかりやすい解説

バントゥー諸語 (バントゥーしょご)
Bantu

ニジェール・コンゴ語派の,ベヌエ・コンゴ語群に属する大言語グループ。バンツー諸語ともよばれる。西アフリカのカメルーンから,コンゴ民主共和国,ウガンダケニアを結ぶ線以南の全域に分布している。バントゥー語は,その拡張が比較的新しいために,斉一でまとまった様相を示し,誰が見ても相互の親近性がはっきりとわかる。ほとんどの言語においては,〈人〉の複数をあらわすバントゥー祖語の再構形ba-ntuがそのままのかたちであらわれており,それがこの名称のもととなっている。

 東アフリカの広域で共通語としても用いられているスワヒリ語のほか,何百かの言語がこの中に含まれるが,おもなものを以下に挙げる。カメルーンのドゥアラ語,エウォンド語。ガボン赤道ギニアのフォン語,コンゴ民主共和国のコンゴ語Kongo,リンガラ語,ルバ語,ルルア語など。ルワンダブルンジルワンダ語,ルンディ語。ウガンダのニヨロ語,トロ語,ガンダ語Ganda。ケニアのキクユ語Kikuyu,ルイヤ語,タンザニアのスクマ語など。ザンビアのルンダ語,ベンバ語,ジンバブウェショナ語,ヌデベレ語。ボツワナではツワナ語,アンゴラのムブンドゥ語,南アフリカのソト語,ズールー語スワジ語などである。
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百科事典マイペディア 「バントゥー諸語」の意味・わかりやすい解説

バントゥー諸語【バントゥーしょご】

アフリカ大陸のコンゴとソマリアを結ぶ線の南側全域に分布する,600以上の同一系統の言語集団。Bantu。ニジェール・コンゴ語派のベヌエ・コンゴ語群に属する。代表的な言語は,スワヒリ語ズールー語,ショナ語,ルワンダ語,キクユ語,コンゴ語,リンガラ語など。最大の特徴は名詞の分類で,人間部類,植物部類などの多くのクラスに分割され,それぞれに特有の接頭辞が付属し,動詞形容詞などが呼応する。
→関連項目アフリカーンス語ショナヌデベレバントゥー

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世界大百科事典(旧版)内のバントゥー諸語の言及

【アフリカ】より

…アフリカ南部において大きな貢献をなしたのはブリークW.H.I.Bleekであった。彼の《南アフリカ諸語比較文法》(第1巻1862,第2巻1869,以後未刊)はその後のアフリカ研究で最も広く知られるようになった〈バントゥーBantu〉(〈人々〉の意)という名称をひろめることとなった。 19世紀のアフリカ語研究は,数言語の単語や文法の類似点をあげて分類するのみではなく,人種的基準,地理的背景をも考慮に入れて分類するということを始めていた。…

【バントゥー族】より

…バントゥーというのは単独の部族をさすのではなく,バントゥー諸語に含まれる言語を話す人々の総称で,バントゥー語系諸族といってもよい。バントゥー諸語の分布は,アフリカ西部のカメルーンからアフリカ東部,さらにアフリカ南部までというように,アフリカ大陸の1/3という広い範囲に広がっている。その全体の人口は4500万,言語の数は600以上に分かれるという。バントゥーはおそらくナイジェリアとカメルーンの国境周辺のベヌエ川流域に起源地をもったが,紀元前に南東に移住し,コンゴ盆地の熱帯降雨林に入り込んだと考えられる。…

【時制】より

…また未来形は一般に純粋に未来時の表現であるより,(叙)mood的色彩を濃くもつ。 複雑な体系の例として,アフリカのバントゥー諸語に属するチョクエ語では,〈過去〉的な意味に四つの時制が区別されるのを挙げることができる。すなわち,(1)tu‐na‐lim‐i〈私たちはたった今耕した〉,(2)tw‐a‐lim‐anga〈私たちは今朝耕した〉,(3)tu‐naka‐lim‐a〈私たちは昨日耕した〉,(4)tw‐a‐lim‐ine〈私たちは昔耕した〉である。…

【ズールー語】より

…南アフリカ共和国の東海岸のナタール州を中心とし,一部スワジランドでも話されているバントゥー系言語で,話し手の数は400万人以上。バントゥー諸語のうち南東バントゥー・ゾーンのヌグニNguniグループに属している。このグループにはズールー語のほか,コサXhosa語,スワジSwazi語が属する。…

【スワヒリ語】より

…ニジェール・コルドファン語族の,ベヌエ・コンゴグループの下位グループである,バントゥー諸語に属する言語。この言語はアラビア語のṣāḥil〈海岸〉に由来する名称が示すように,オマーンやイエメンのアラブ商人たちが,東アフリカ海岸の商業根拠地で地元のバントゥー諸語を話す人々との接触の過程で,ピジン言語(交易上の混交言語)として成立,その後,スワヒリ語のみを話し,またそれを母語とする人々のグループが数を増して定着(クレオール)化し,版図をひろげていった。…

【性】より

…shariba al‐waladu.(その男の子は飲んだ)に対して,主語が〈女の子〉になるとsharibati al‐bintu.と動詞形がsharibat(i)とかわるのである(なおal‐は定冠詞)。 こうしたインド・ヨーロッパ語やセム語での組織と異なり,アフリカのバントゥー諸語などでは名詞が接辞の違いによりいくつもの類(クラス)に分けられ,その数は多いもので20以上に及ぶ。例えばスワヒリ語では接頭辞の単数―複数でのパターンの違いによってクラス分けが行われ,形容詞,所有代名詞などの呼応がみられる。…

【バントゥー族】より

…バントゥーというのは単独の部族をさすのではなく,バントゥー諸語に含まれる言語を話す人々の総称で,バントゥー語系諸族といってもよい。バントゥー諸語の分布は,アフリカ西部のカメルーンからアフリカ東部,さらにアフリカ南部までというように,アフリカ大陸の1/3という広い範囲に広がっている。…

※「バントゥー諸語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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