翻訳|Swahili
ニジェール・コルドファン語族の,ベヌエ・コンゴグループの下位グループである,バントゥー諸語に属する言語。この言語はアラビア語のṣāḥil〈海岸〉に由来する名称が示すように,オマーンやイエメンのアラブ商人たちが,東アフリカ海岸の商業根拠地で地元のバントゥー諸語を話す人々との接触の過程で,ピジン言語(交易上の混交言語)として成立,その後,スワヒリ語のみを話し,またそれを母語とする人々のグループが数を増して定着(クレオール)化し,版図をひろげていった。すでに15世紀ころには相当整った形のスワヒリ語が話されていたといわれる。現在では,ケニア,タンザニア,ウガンダのほぼ全域,ルワンダ,ブルンジとコンゴ民主共和国東部で広く話されている。また母語とはしないものの,共通語(リングア・フランカ)としてスワヒリ語を話す人々を含めると,話し手人口は2000万を超え,西アフリカのハウサ語とともにブラック・アフリカで最も重要な言語の一つである。
言語構造の面からみたスワヒリ語は,周辺のバントゥー語と異なり,音の高低のアクセント(音調)が文法的な意味をもっていない。最後から数えて2番目の音節が自動的に高く発音される。バントゥー語の特徴である名詞クラスのシステム(名詞が人間,樹木,果物,小さい物体など,そのあらわす物の性質その他により何種類かに分類され,それぞれに特有の接頭辞をもち,さらにその同じ接頭辞が,名詞と結合する形容詞,動詞にも添えられる。これらの具体的な例については表を参照)は,スワヒリ語でもはっきりとあらわれており,アラビア語のkitāb(本)を小さい物体をあらわすki-,vi-クラスの接頭辞ki-で再解釈して,ki-tabuのように見なす現象も生じる。語彙では,その成立の起源を反映して,アラビア語に由来する語が目だち,とりわけ海岸地帯の方言では,〔ð〕や〔θ〕などのアラビア語音韻までが採り入れられている。それ自体ピジン言語として発生したスワヒリ語だが,20世紀になって急激に版図を拡大する段階で,新たなピジン・スワヒリ語を数多く生み出した。そのなかでもアップカントリー・スワヒリUp-Country Swahiliは,白人入植者やインド人と地元のアフリカ人との接触から生じ,コンゴ・スワヒリCongo Swahiliは,スワヒリ語がコンゴ盆地へと伸張していく際に生み出されたものとしてよく知られる。
執筆者:松下 周二
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アフリカ東海岸で話されていたバントゥ(バントゥー)系のある言語に、季節風に乗って海路交易にやってきたアラブ人の言語の影響が加わって形成された広域共通語。タンザニア、ケニア、ウガンダ、コンゴ民主共和国(旧ザイール)東部などで話され、話し手人口数千万人に達するブラック・アフリカ最大の言語の一つである。ただし、その話し手の多くは各自の部族語を母語とする人々である。言語的には、名詞がかなりの数のクラスに分かれ、どのクラスに属するかで修飾する形容詞などの形の一部が異なるなどバントゥ語としての特徴を保持し、身近な語彙(ごい)もおおむねバントゥ起源である。母音は五つで、アクセントは一型化している。地域によってかなりの方言差が認められる。
[湯川恭敏]
『和崎洋一編『スワヒリ語・日本語辞典』(1980・養徳社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ハッツァは南アフリカのサン(ブッシュマン)と近縁で,狩猟採集生活を営んでいた。そのほか,東部のインド洋岸にはスワヒリSwahiliと称される人々がいるが,彼らはダル・エス・サラームやタンガなどの都市に住み,アラブなどと混血したバントゥー系で,イスラムを信仰し,スワヒリ語を母語とする人々である。ザンジバル島には初期に移住してきたハディム,トゥンバトゥなどのバントゥー系の人々が,今日では漁業に従事している。…
…しかし,もともと交易上の共通語として出発しても,それを母語とする集団が形成されると,そうした集団はその言語によって日常生活のあらゆる面で意思交換を行わなければならないため,言語自体もその機能を十分果たしうるものに発達させられる。たとえば,東アフリカのスワヒリ語は,初めは交易上の共通語として形成されたが,その後海岸地方その他にそれを母語とする集団が生まれ,それに伴って日常生活の全面にわたって他の言語(部族語)と同等の表現能力を有するものとなり,かつ,少なくともそうした地域においては,人間生活への密着度も部族語と同等のものとなっている。【湯川 恭敏】。…
※「スワヒリ語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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