パイプたばこ(読み)ぱいぷたばこ(その他表記)pipe tobacco

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パイプたばこ」の意味・わかりやすい解説

パイプたばこ
ぱいぷたばこ
pipe tobacco

パイプで吸うための荒刻みのたばこ。ヨーロッパでは、パイプでたばこを吸う喫煙がもっとも普及した方法で、紙巻きたばこができるまでは喫煙の主流であった。パイプたばこはアメリカ先住民の製法に基づき、葉たばこを発酵させてから板状または縄状にしたものをほぐす、または削ることから始まって、しだいに改良を加えながら、現在はおもにヨーロッパ、アメリカ、日本でそれぞれ特色のある製品が製造されている。製品は大別して次のような3種類の喫味がある。(1)イギリス・タイプ アメリカ産そのほかの黄色葉を主体に、薫煙した黒色のラタキア葉、独特な乾燥と発酵処理を施したペリック葉、暗色火干(ひぼし)葉などをミックスして、葉たばこの生地の味と香りを生かしている。芳醇(ほうじゅん)な香りとこくのある味が特徴で、イギリス製品に多い。(2)アメリカ・タイプ 多孔質でほかの葉や香料となじみのよいバーレイ葉を熱処理したものを主体に、ほかの葉をミックスし、さらに香料を加えたもの。水分が少ないために燃焼性がよく、香料臭があって味覚に柔らかさがあるのが特徴である。(3)ヨーロッパ・タイプ アメリカ産そのほかの黄色葉に、バーレイ葉、オリエント葉などをミックスし、香料を加工してある。葉たばこ生地の香りに香料の香味が加わって、柔らかい喫味が特徴となっている。

 現代の製品は、各タイプの原料葉配合にとらわれず、各種葉たばこを配合したり、加工する香料によってもきわめて特色ある製品が多い。したがって製法も違うが、標準的には原料葉の中骨(ちゅうこつ)を除き、蒸気熱気の熱処理と乾燥、冷却などを繰り返して葉固有のくせを取り除き、カンゾウ、砂糖などを加工してから特殊香料を加えて刻む。こうした加工のなかからマイルド、ミディアム、フル・ストロングなど味覚の強弱による製品ができあがる。刻み方にも種類があり、フレークキューブ、ストレート、カーリーキャベンディッシュ(黄色葉配合に限る)、またシャグといって、東南アジアで手巻き用にも使う細刻みもある。ロシア、ポーランドハンガリーでは、ニコチアナ・ルスチカ種Nicotiana lusticaに属するニコチンの多い暗色たばこ「マホルカ」を、パイプたばこに用いる所もある。

[田中冨吉]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のパイプたばこの言及

【タバコ(煙草)】より

…(3)刻みタバコ パイプやきせる用のものと手巻用とに分けられる。パイプタバコには,黄色種を主体としたイギリス・タイプと,バーレー種を主体とするアメリカ・タイプがある。(a)スモーキング・ミクスチュア 黄色種に,ペリキュー葉(アメリカのルイジアナ州産,生葉を強制発酵させた黒色の葉)やラタキア葉(シリア産,薫煙乾燥し,薫臭をともなう芳香をもつ)を配合した荒刻みの製品。…

※「パイプたばこ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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