日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ヒューズ(Richard Hughes)
ひゅーず
Richard Arthur Warren Hughes
(1900―1976)
イギリスの小説家、詩人、劇作家。ウェールズの名家に生まれ、オックスフォード大学に学び、W・B・イェーツ、T・E・ローレンス、R・R・グレーブズらに出会った。寡作だが天才的な作家。『危険』(1924。邦訳『炭坑の中から』)は最初のラジオ放送劇といわれる。西インド諸島からイギリスへ帰る子供たちが、彼らをとらえた海賊を翻弄(ほんろう)するさまを描いた『ジャマイカの烈風』(1929)は、子供の非情さと体制というものの不条理を暴いて意表をつく古典的名作。二つの世界大戦間にアメリカ、カリブ海を広く旅し、1934年以後ウェールズに定住してジャーナリズムに寄稿した。劇的状況に倫理的主題を盛り込む『大あらし』(1938)ののち、現代史を扱う連作小説『人間の窮状』に取り組んだが、全4巻の予定のうち第2巻(1973)までで未完に終わった。
[小野寺健]
『小野寺健訳『ジャマイカの烈風』(1970・筑摩書房。1977・晶文社)』▽『北山克彦訳『大あらし』(1975・晶文社)』▽『矢川澄子訳『まほうのレンズ』『ジャングル学校』(1979・岩波書店)』