改訂新版 世界大百科事典 「ビュブロス」の意味・わかりやすい解説
ビュブロス
Byblos
レバノン西部,ベイルートの北約27kmにある古代都市遺跡。現在名はジュバイル。旧約聖書ではゲバルGebal,古代エジプト史料ではクブナ,アッシリア史料ではグブラと呼ばれた。ビュブロスはギリシア語名であり,ギリシア人は当地を経て輸入されたパピルスをビュブロスと呼んだことから,後世,本,聖書Bibleなどを表す語が派生した。古代ビュブロスの集落は新石器時代に始まり,エジプト初期王朝時代,古王国時代にはレバノン産木材の積出港として繁栄し,その間に王政下の都市国家となった。前12世紀までは地中海東岸最大の海港であったが,政治的・文化的には常にエジプトの影響下にあった。前11世紀以後も港町として存続したが,その勢力はフェニキア人の他の港テュロスやシドンに及ばなかった。1103年には十字軍が占領したが,89年にはサラーフ・アッディーン(サラディン)が奪還した。1921年以来,P.モンテらにより組織的発掘調査が行われている。
執筆者:小川 英雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報