改訂新版 世界大百科事典 「フクロテナガザル」の意味・わかりやすい解説
フクロテナガザル
siamang
Hylobates syndactylus
霊長目オランウータン科の類人猿。テナガザル類の中ではもっとも大型で,のどに大きな鳴きぶくろをもつことからこの名がある。別名シャーマン。かつてはよくフクロテナガザル属として別属に分類されたが,現在では他のテナガザルとともにテナガザル属に含められるのがふつうである。マレー半島とスマトラ島に分布する。全身真っ黒な毛で覆われ,脚の第2指と第3指の間に皮膜をもつのが特徴である。体重は9~13kg,頭胴長44~63cmで,性差はほとんどない。他のテナガザルと同様,成熟した雄と雌のペアとその子どもたちからなる集団をつくり,1km2ほどのテリトリーをかまえる。のどぶくろをいっぱいに膨らませて鳴く声は,霊長類の中でももっとも大きなものであり,4km四方にとどくといわれる。毎朝見られる隣接集団間の唱和は,それぞれのテリトリーを主張し合っているのだと考えられる。
執筆者:北村 光二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報