ベルベット・アンダーグラウンド(読み)べるべっとあんだーぐらうんど(英語表記)Velvet Underground

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ベルベット・アンダーグラウンド
べるべっとあんだーぐらうんど
Velvet Underground

アメリカのアンダーグラウンド・ロック・シーンにおける最重要グループ。「アンダーグラウンド」と呼ばれるロック・ミュージックは、メインストリーム(主流)とは異なる自立した価値観と美意識を備え、独自のシーンを世界各国で構成しているが、現在のアンダーグラウンド・シーンに有形無形の影響を与え、シーン全体の源流を形作ったのがこのグループであるといえる。
 ニューヨーク、ブルックリンに生まれたルー・リードLou Reed(1942―2013、本名ルイス・アラン・リードLouis Allan Reed、ギター、ボーカル)は、幼少期より作詞・作曲を好み、16歳の時に最初のレコードをリリースしている。ニューヨーク州のシラキュース大学で詩とジャーナリズムを専攻したのち、1964年イギリスからニューヨークに留学中の現代音楽の作曲家ジョン・ケイルJohn Cale(1942― 、ベース、ビオラ、ピアノ)と出会い、大学時代の友人スターリング・モリソンSterling Morrison(1942―1995、ギター、ベース)を交えて音楽活動を始める。モーリン・タッカーMaureen Tucker(1944―1995、ドラムス)がのちに加わり、ベルベット・アンダーグラウンドとして活発にライブ活動を行っていた彼らは、ポップ・アーティストとしてすでに著名であったアンディ・ウォーホルと出会い、彼の工房であり社交場であった「ファクトリー」に出入りするようになる。ウォーホルはグループのパトロン的存在となり、彼らにミックス・メディア・ショー「ハプニング」の伴奏を務めさせることになる。
 ウォーホルは歌手兼女優のニコNico(本名クリスタ・パフゲンChrista Paffgen、1938―1988)をグループに加入させ、ベルベット・アンダーグラウンドにレコード会社との契約を取り付ける。彼らのファースト・アルバム『ベルベット・アンダーグラウンド&ニコ』(1967)には、リードによるドラッグやサド/マゾ、ホモセクシュアルといったテーマを描いた詩に、ケイルによって導入されたアバンギャルドなサウンドが伴った曲が収められており、ウォーホルによるバナナのペインティング(シールになっており剥がすことができた)をジャケットにあしらったものだったが、ウォーホルのアーティストとしての名声もこのレコードのヒットに結びつくことはなかった。1967年にはウォーホルとのショー出演契約を破棄、ニコもバンドを脱退する。
 セカンド・アルバム『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』(1968)は、よりノイジーで激しいサウンドのロックン・ロール集で、中でも17分にわたるラスト・ナンバー「シスター・レイ」は衝撃的であった。しかしリードとケイルはグループの音楽的方向性を巡って争うようになり、1968年9月にケイルはバンドから追放される。スタジオ・ミュージシャンのダグ・ユールDoug Yule(ベース、キーボード)を加えた彼らはサード・アルバム『ザ・ベルベット・アンダーグラウンド』(1969)をリリース、全米ツアーも行うが商業的にはほとんど注目を集めることはなかった。4枚目のアルバム『ローデッド』(1970)の録音終了後、8月にニューヨークのライブハウス、マクシズ・カンザスシティで行ったライブを最後に、リードはグループを脱退、グループは事実上の終焉を迎える(その後もユールが中心となってベルベット・アンダーグラウンド名義の活動が1973年ころまで続いている)。
 リードはソロ活動を開始し、『トランスフォーマー』(1972)や『ベルリン』(1973)など優れたアルバムを発表。都市の闇を描き出すロック・ミュージシャンとして評価を高める。ケイルもプロデュースやセッション活動、映画音楽など多方面で活躍する。
 ベルベット・アンダーグラウンドはその活動中はまったく無視された存在であったが、彼らの先鋭的なサウンドと都市のリアルな情景を描いたリードの詞、そして商業主義に染まることのなかった活動は後のパンク期に再評価されることになる。彼らの影響を受けたグループが多数出現し、ブルースのイディオムをまったく用いないノイジーなギター・サウンドをポップなメロディに載せたロックン・ロール、というフォーマットは1980年代以降の非主流派ロック・バンドの典型的なスタイルとなった。この再評価を背景に1993年に一時的に再結成しヨーロッパ・ツアーを行った。[増田 聡]
『ビクター・ボクリス、ジェラード・マランガ著、羽積秀明訳『Up-Tight――The Velvet Underground Story』(1989・フールズメイト) ▽ピーター・ドゲット著、奥田祐士訳『ルー・リード――ワイルドサイドを歩け』(1992・大栄出版) ▽デイヴ・トンプソン著、松田葵訳『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド――彼ら自身による証言』(1993・洋泉社)』

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