ムーンショット型研究開発事業(読み)むーんしょっとがたけんきゅうかいはつじぎょう

知恵蔵の解説

ムーンショット型研究開発事業

研究開発において、実現が困難だが成功すれば大きな成果を得られる事業。ムーンショット(moon shot)は有人月面着陸を実現した米国のアポロ計画を指す。アポロ計画のように、野心的な目標を設定し資源を集中させて独創的な発想や斬新な技術により実現するというもの。内閣府の主導により「我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進する」として、ムーンショット型研究開発制度が開始された。
アポロ計画が発表された1961年当時、アメリカの宇宙開発は有人宇宙船ボストーク1号で地球周回に成功したソビエト連邦(ソ連、現ロシア)に遅れをとり、宇宙船マーキュリー3号が弾道飛行で大気圏外をわずか15分間ほど通り抜けることに成功したばかりだった。米大統領ケネディ(当時)は、ソ連を凌駕(りょうが)するとして「10年以内に有人月面着陸を実現する」とアポロ計画を打ち出した。当時の技術水準では実現不可能かとも思われたが、莫大(ばくだい)な資金と人材が投入され69年にはこれを実現した。この成功になぞらえて、2016年にがん撲滅計画として「がんムーンショット計画」をオバマ米大統領(当時)が発表したことなどから、ビジネスの世界ではムーンショットがある種の流行語ともなった。内閣府はEU、中国、米国で同様の野心的な研究開発への投資がすでに拡大中であるとし、これに取り組むためのムーンショット型研究開発制度を創設し、5年間で1千億円の予算が用意された。同制度で掲げる目標は、「サイボーグ化技術の実現」「地球上からの『ゴミ』の廃絶」「テラフォーミング技術の確立」など公募された25課題から、実現可能性などを検証し数件まで絞り込むとしている。ただし、ハイリスクな挑戦に大きな費用を投じることについては疑問の声があり、宝くじを買うようなものだとの批判もある。

(金谷俊秀 ライター/2019年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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