ある一時期に突然多くの人に受け入れられて,ひんぱんに用いられる語または語句。〈はやりことば〉ともいう。たいていは,その使用は短い期間で終わるが,まれに長く用いられ定着化して,一般辞書に登録されることもある。多くの人に受け入れられるのは,その語または語句が世相の本質または一面をずばりと表現しているためである。例えば昭和20年代の〈ギョッ〉〈アジャパー〉〈タケノコ生活〉,昭和30年代の〈ガチョン〉〈一億総白痴〉,昭和40年代の〈シェー〉〈過疎〉,昭和50年代の〈オヨヨ〉〈オイルショック〉と,このように並べると,日本の戦後の世相がこれらの語によってよく象徴されていることがわかる。しかし,このうち一般辞書に登録されたのは〈タケノコ生活〉〈過疎〉くらいのものである。
流行語は新奇なものに価値を認める社会で生まれやすい。流行語が多くは新語なのもそのためである。外来語(和製洋語も含めて)は,ことば自身が目新しいこともあって,流行語になりやすい性質をもっているし,さらには,新しい音形を提供しやすいオノマトペ(擬音語)も流行語になりやすく,また俗語・方言形も目新しいので流行語になりやすい(例:〈スキンシップ〉〈カックン〉〈チカレタビー〉)。
流行語は,だれからともなく流行し出すこともあるが,ラジオ時代,テレビ時代,週刊誌時代の到来をみて,さらに近年のコピー時代に入ると,意図的に流行語をものごとの新奇さやそのものごとのプラス・イメージを訴えるための手段に利用することが多くなった。そういう流行語のうちには作者のわかっているものがあるし(例:〈ネクラ〉〈ネアカ〉(普通,タレントのタモリらによると言われる)),また,流行した媒体のわかっているものもある。例えば〈むちゃくちゃでござりまする〉〈さいざんす〉はラジオを通じて,〈太陽族〉〈たよりにしてまっせ〉は小説から,〈ドライとウエット〉〈書きますわよ〉は週刊誌によって,〈チカレタビー〉はテレビ(のコマーシャル)を介してひろまった。しかし,近年の〈話はピーマン〉(ピーマンのように中身がないの意)のように若者の間をほとんど口伝えにひろまった例もある。同じ語でも,ある人が言い出しても受け入れられないのに,別のある人が使い出すと,たちまち迎えられることがある。後者のような人は〈言語ボス〉とでも言うべき存在で,それは個人ではなく,マスコミであることもある。流行語は,国や地方単位のほか,学校の1クラスのなかでだけひろまることもある。
執筆者:柴田 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「はやりことば」ともいう。その時々の人々の興味や関心に適合して、強い感化的な意味をもって、急激に使用されるようになる語。多くは短期間に消滅するが、長く使われて一般の語彙(ごい)に取り込まれることもある。マスコミの発達とともに、流行語の消長もいっそうめまぐるしくなってきている。
語種もさまざまで、漢語(三等重役、八等身など)、和語(買出し、つるし上げなど)、外来語(キングサイズ、ケセラセラなど)、混種語(逆コース、総会屋など)などがある。また、「老いらくの恋」「書きますわよ」のように句をなしているものもみられる。感化的な意味合いが強いことから、擬声語的なものも多い。たとえば、ごく普通の語句を特異なアクセントやイントネーションで発音して流行語化することもある。さらに、従来使われていた語句にスポットがあてられ、もてはやされもする。昭和30年代にはやった「神武(じんむ)以来」という語は、すでに西鶴(さいかく)の作品にみられるといったぐあいである。一方、「番長」「不定愁訴」「~症候群」などのように、新しくつくられた語句もある。その場合、「よろめき」や「太陽族」のように、つくりだしたものや出所の明らかなものもあるが、「いかす」「ナウい」のように、だれからともなく使われ出したものもある。流行語には社会の関心が現れているので、その変遷から各時期の世相がうかがえる。
[鈴木英夫]
『川崎洋著『流行語』(1981・毎日新聞社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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