モリブデン化合物(読み)モリブデンカゴウブツ

化学辞典 第2版 「モリブデン化合物」の解説

モリブデン化合物
モリブデンカゴウブツ
molybdenum compound

モリブデンの酸化状態には-2および0~6までのものが知られている.Mo-Ⅱには [Mo(CO)5]2-,Mo0 には [MoI(CO)5],Moには [Mo(C6H6)2],Moには [Mo2Cl8]4-,Mo6Cl12などがある.B,C,N,Siなどと侵入型化合物をつくる.酸化物,硫化物,オキソ酸,ハロゲン化物,ハロゲノ錯体,ハロゲン化酸化物,オキソ錯体,カルボニル化合物シアノ錯体,などが知られている.有色の化合物が多い.たとえば,ハロゲン化物では,MoCl2黄色,MoCl3暗赤色,MoCl4黒色,MoCl5緑黒色,MoCl6黒色,MoBr4黒色,MoF4淡緑色など.酸化数4~6のモリブデン化合物には,モリブデン酸塩 [MoO4]2-,イソポリモリブデン酸 [Mo7O24]6-,[Mo8O26]4- など([別用語参照]イソポリ酸),およびヘテロポリモリブデン酸塩 [PMo12O40]3-,[As2Mo6O26]6- など([別用語参照]ヘテロポリ酸),[MoO2]2+,[MoO]3+,[Mo2O3]4+,[Mo2O4]2+,[MoO]2+,Mo O2を中心カチオンとする錯体がある.モリブデン酸塩の酸化力は同族クロム酸塩ほど強くない.オキシダーゼ酵素や酸化触媒モリブデン酸ビスマス,モリブデン酸鉄A2Mo3O12(A = Bi,Fe)中でMoはO,HOを放出するとともに4,6の状態を行き来する.MoS2は層状構造で潤滑剤として利用される.ジチオカルバミン酸イオンR2NCS2やジチオリン酸イオン(RO)2PS2との錯体は,油に可溶な潤滑用添加剤である.MoS2原油の水素化脱硫触媒の活性成分としても重要である.三酸化モリブデンMoO3[CAS 1313-27-5],モリブデン酸アンモニウム(NH4)6Mo7O24[CAS 12027-67-7],モリブデン酸ナトリウムNa2MoO4[CAS 7631-95-0]ほか,多くのモリブデン化合物はPRTR法・第一種指定化学物質である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android