日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユスティノフ」の意味・わかりやすい解説
ユスティノフ
ゆすてぃのふ
Peter Alexander Ustinov
(1921―2004)
イギリスの劇作家、俳優。正確にはアスティノフ。ロンドン生まれの白系ロシア人。すでに10代の後半から自作自演のボードビルの寸劇で早熟な才能を発揮、20代に入ると次々に劇作を発表して話題をまく。その後の多彩な戯曲作品のうち代表作と目されるのは、『四人の隊長の恋』(1951)と『ロマノフとジュリエット』(1956)。前者はおとぎ話『眠りの森の美女』、後者はシェークスピアの『ロミオとジュリエット』を下敷きに、奇想天外なプロットで当時の世界の政治状況を鋭く取り込み、彼自身の好演と相まって1950年代のヒット作となった。戯曲のほか小説も書き、長編、短編集がある。また映画のシナリオも多く手がけ、監督作品もある。1979年にカナダのシェークスピア・フェスティバルで『リア王』を演出、自ら主演した。俳優としてはクリスティの原作を映画化した『ナイル殺人事件』(1978)などの名探偵ポアロ役が有名。また、『スパルタカス』(1960)、『トプカピ』(1964)でアカデミー助演男優賞を二度受賞した。劇作家、俳優業のかたわら国連児童基金(UNICEF(ユニセフ))の親善大使をつとめるなど幅広く活躍した。1990年にナイトに叙された。
[大場建治]
『内村直也訳『四人の隊長の恋』(1956・白水社)』